■素材を選び抜き手作業で仕込むたらこ。
(文・仰木晴香/スロウ81号掲載)
噴火湾の湾口に位置する鹿部町は、スケトウダラ漁やコンブ漁、ホタテの養殖が盛んな漁業の町です。津軽暖流と親潮の2つの海流が流れ込むこの海域にはプランクトンが多量に発生し、海は栄養豊富な漁場となっています。
そんな鹿部の漁港で水揚げされた海産物だけを使って水産加工品を作る、一印高田水産。漁師として鹿部に根を下ろし、3代目が加工業を始めました。現在代表を務める高田大成さんは4代目。鹿部で獲れる素材に大きな信頼を寄せ、その良さを活かすため、自ら買い付けた魚貝をその日のうちに手作業で仕込んでいます。
写真上/1967年創業の一印高田水産。鹿部で獲れる海産物に自信を持ち、その良さを活かした加工品づくりを続けてきました。
中でも鹿部の特産品であるたらこには、高田水産のこだわりがぎゅっと詰まっています。仕入れたスケトウダラを手作業で捌き、取り出した卵を選別。約2日間塩水に漬け込んだ後に、 もう一度選別します。こうして手間をかけるのは、高品質のたらこを届けるため。卵を仕入れて作ることもできるけれど、あえて魚を捌くところから自社で手がけることで、自分たちの目で卵を選ぶことができ、質の良い卵を手に入れられるそう。加えて自社で設定した規格をもとに2度にわたって選び抜くことで、「高田水産のたらこ」を作り上げているのです。
卵の塩漬けは大成さんだけができる重要な作業。卵の柔らかさやその日の気温によって塩分濃度を決めますが、その調整は長年の作業で培った感覚が頼り。間近で見ている妻の未花さん曰く、「身体が覚えているような滑らかな作業」で漬け込んでいきます。
たらこの製造はスケトウダラ漁の時期に合わせ、12月にのみ行われます。たった1ヵ月で1年分のたらこを、それもすべて手で仕込んでいくのは大変な作業ですが、「漁師さんが命がけで獲ってきてくれたものを、鮮度が高いうちにおいしく漬け込みたいから」と、冬は日々製造に励んでいます。
写真上/ホタテを剥く様子。一つひとつの作業を手作業で丁寧に行っています。
■安心できる自然な色のたらこを作りたい。
たらこへのこだわりはもう一つ。3年ほど前から合成着色料や保存料の使用をやめ、天然着色料であるベニコウジ色素を使うようになりました。
きっかけは、未花さんが体調を崩して入院したことでした。「同じ病室にいた方が『たらこが好きだけれど、添加物に対して舌が敏感になってしまって食べられない』という話をしていて。私も入院してから同じような経験をして、人間の身体は食べ物からできていることを実感したんです。だから生産者として、安心して食べてもらえるものを作りたいと強く思いました」。着色料を変えるということは、長年誇りを持って作り続けてきた「高田水産の紅色」が変わるということ。「正直、変えたくなかった」と迷いもあった大成さんでしたが、未花さんのまっすぐな思いに動かされ、合成着色料の使用をやめることを決意しました。
しかし、それまであたりまえに使ってきた材料を変えるのは簡単なことではありません。味わいや色合いが変化しないか、素材の品質を損なわないか、2人で試行錯誤を重ねました。そして2年の月日をかけ、自然な色合いのたらこを作り上げたのです。「出来上がったたらこをその病気の方に食べてもらったら、『1本丸ごとおいしく食べられた』と。それがすごくうれしくて。頑張ってやって良かったなと思いました」。
さらに現在では無着色のたらこの製造にも挑戦しているそう。「鮮度の良さや色と形のきれいさが重要なので、より卵を厳しく選び抜かなければいけませんが、それを待っている人がいる。食べ物に関心を持つ人が増えている今だからこそ作ってみたいです」と意気込みを見せます。
■漁師の姿を間近で見て、思いを背負いながら。
「漁師さんから受け取ったものを良いものにして送り出したい。そういうリレーなんです」。取材中、漁師に対する思いを何 度も口にした未花さん。SNSや催事での販売を通して、自社の製品だけでなく、漁師や鹿部の地域のことを積極的に発信しています。
函館出身の未花さんが結婚を機に鹿部へとやってきたのは、2013年のこと。始めの頃は加工の知識や技術もなく、地元漁師とのつながりもなかったという未花さん。漁師のことを知ろうと思ったきっかけは、ある人からの「たらこがどこから来るのか、見たことはありますか?」という問いかけでした。高田水産の一員となったからには、家業のたらこづくりや鹿部町のことをもっと知りたい。そう感じた未花さんは、まずはたらこの原材料であるスケトウダラがどのようにやってくるのか見ようと、漁の現場を訪ねることにしました。
ある日の早朝、緊張と不安を抱えながら港へ足を運んだ未花さん。そこで目にしたのは、厳しい寒さの中で懸命に働く地元漁師の姿でした。「こんな風にしてうちのところへ魚が来ているんだなと初めてわかって、知らなかった恥ずかしさと感動とで泣きました。スケトウダラは冬しか穫れないから、吹雪の中で船を出すこともある。本当に命がけでやってくれているんだって」。
写真上/厳しい寒さの中行われるスケソウダラ漁。夜の8時に港を出て魚がかかった網を回収し、朝の4時に戻ってくるそう。「皆さん休みなく働いていて、自然の中で生きているからこその強さ、仕事に対するプライドを感じます」。
自分たちのたらこは、地元漁師の存在があってこそ作れるもの。仕事の内容は違っても、良いものを届けたい気持ちは同じ。そう実感した未花さんは、それから何度も港へ足を運ぶように。「自分たちの商品だけじゃなくて、漁師さんのことから伝えていきたい。欠かすことのできない存在だから。それに漁師さんの姿を見ていると、私たちも良いものを作らなきゃって気合いが入るんです」。
漁師たちも、こうして生産の現場を知ろうとする未花さんを快く受け入れてくれました。時には漁師が高田水産の直売所へたらこを買いに来てくれることもあるそう。「漁に出るときのおにぎりの具に、うちのたらこを入れてくれていると話してくれて。私たちのたらこが漁師さんの元気の源になっているのがすごくうれしいんです」と笑顔を見せます。
■鹿部だからこそのうま味がたっぷり。
高田水産のたらこは、粒が立ち、サラサラとしているのが特徴。プチプチとした粒感があり、うま味もたっぷりです。そのおいしさの理由は、鹿部の恵まれた環境にもあるそう。秋になるとスケトウダラは産卵のため、回遊します。産卵に向けて卵巣は成熟していき、鹿部沖を通る頃、しっかりとした粒感とうま味が感じられる状態に。水分量もちょうど良く、たらこづくりにベストなタイミングの卵巣を持つスケトウダラを獲ることができるのです。加えて産卵期には陸側へと魚が近づいてくるため、水揚げまでの時間が短く鮮度を保てるのも、大切なポイントです。
そんなすばらしい素材が手に入るのも、獲ってきてくれる漁の存在があってこそ。「漁師さんがいないとたらこも作れないですから」と話す2人の言葉からは、漁師に対する尊敬と責任が感じられました。
地元漁師の頑張りを肌で感じ、思いを受け継いで加工品づくりに励む、高田水産。海辺の町で繋がれるリレーがこの先もいつまでも続いていくことを、願ってやみません。
■セット内容紹介
高田水産が自社規格で選別した中でも最高品質の「雪たらこ」と、豊かな海で2年かけて育ったホタテ。冷蔵庫でゆっくりと解凍して、まずはそのまま、素材のおいしさを楽しんで。
・雪たらこ
贅沢にひとはらのせて、お茶漬けに。塩味とうま味のバランスが良く、あっという間に丸ごと食べてしまいます。
・噴火湾産ホタテ
未花さんも夢中になったという鹿部のホタテもセットでお届け。ぷりぷりとした食感の後、濃い甘みがじんわりと広がります。まずはシンプルに生姜醤油でいただくのがおすすめ。カルパッチョやパスタに使えば、華やかな一品に仕上がります。
■作り手 高田水産(鹿部町)
代表の高田大成さんと妻の未花さん。未花さんが鹿部にやってきた理由 は「ここのホタテが毎日食べられるなら、嫁いでも良いかなって(笑)」。明るく元気な未花さんに寡黙な大成さんも動かされ、たらこの着色料の切り替えや新商品の開発に挑戦しています。
■商品詳細
賞味期限:
雪たらこ/製造より冷凍で360日
噴火湾産ホタテ/製造より冷凍で180日
原材料:
・雪たらこ/助宗たら卵(北海道産)、食塩、調味料( アミノ酸等)、着色料(ベニコウジ)
・噴火湾産ホタテ/ほたて貝(北海道噴火湾湾口産)
賞味期限/製造より冷凍で180日
セット内容(内容量):雪たらこ(200g)×1、噴火湾産ホタテ(300g)×1
※たらこに使われている「ベニコウジ色素」は食品添加物公約書の規格に適合した着色料であり、規格に基づいて使用しています。
■宅急便60サイズ発送(冷凍)
1セットまで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後5営業日で発送予定。
■熨斗
対応可
対応可能な熨斗は以下の通りです。ご希望の方は備考欄に記入してください。
・祝いのし紅白蝶結び
・祝いのし10本紅白結びきり
・祝いのし5本紅白結びきり
・仏のし黒白結びきり
・仏のし黄白結びきり
・シール お中元
・シール お歳暮