■北海道の素材と好奇心を掛け合わせて。
(文・猿渡亜美/スロウ81号掲載)
「チョコレートって、どうやって作るのだろう?」。物心ついたときには大量に生産された板チョコレートが販売されており、バレンタインにはそれを溶かして“手づくりチョコ”を作ったつもりでいました。改めて考えてみると、ぼんやりと「カカオ豆を使うのだろう」ということくらいしかわかりません。ブレイク由子さんが本格的にチョコレートを作るようになったのも、そうした素朴な疑問を抱いてのことでした。
元々はイギリスで暮らしていた由子さんとティムさん夫婦。長男の誕生がきっかけとなり、生活の拠点を見直すことに。「できれば自然豊かなところで、のびのびと育てたい」というのが2人の共通の思いでした。選んだのは、過去に訪れたことがあったニセコ。当時、国際化が進み始めていたニセコなら「子どもも学校に馴染めるかも」という期待もあり、2009年に移り住むことにしたのです。
転機は、仕事復帰を意識し始めた2015年頃。じっくりと「何をしたいか」と考えたとき、自宅でドレスを作っていた祖母のことを思い出した由子さん。希望は2つ。祖母のように何かを作り出したい。できれば自宅で作業したい。そうすれば子どもたちが熱を出しても、すぐに看病できるからです。
その当時、ダークチョコレートにハマっていた由子さんは「チョコレートの作り方」に興味を抱きます。インターネットで調べていくうちに、世界には個人でカカオ豆からチョコレートを作る人が増えてきていることを知り、とあるイギリス人がまとめた記事に出合います。ゼロからチョコレートを作り始めた経緯、必要な機械や作り方などの過程が細かく書かれていて、由子さんは記事を参考にしながらチョコレートを作り始めました。
最初のハードルとなったのが、カカオ豆の品質。市販のカカオニブ(胚乳)を購入し、チョコレートを作ってみてもなかなかうまくできません。市販されているものは収穫から時間が経った古いもので、香りが良くないのです。由子さんは「やはりカカオ豆から加工しなければ」と気づき、東京の複数の卸業者に相談したものの、気に入った豆は「供給が安定せずいつでも手に入るとは限らない」ことが判明。頭を抱えていたところ、アメリカのカカオ豆のオンラインマーケットでグアテマラの農園の経営者と巡り合います。その農園は20年ほど放置されてきた畑を復活させ、カカオ豆の生産を再スタートさせており、代々受け継がれてきた農園を守りたい、という強い気持ちを持っていました。「ストーリーが素敵だったのと、何より新鮮で、すごくおいしいカカオ豆だった」と由子さん。グアテマラという地球の裏側で、ゼロから何かを生み出すという共通点をもった農園に共感し、契約することに。今も変わらずその農園からカカオ豆を仕入れています。
商品として形になったのは2016年頃。工房は当初の希望どおり、自宅に構えることができました。元々農家の住宅だった建物を借り受けています。「大家さんが良い方で、半地下のスペースを工房にするために改造させてもらったんです」。工房は決して広くはありません。製造するスペースは3〜4畳ほどでしょうか。1人で作業するのが精一杯です。
当初は由子さんが1人で行っていましたが、コロナ禍になり時間の余裕ができたティムさんも手伝うように。ティムさんは世界中のビーントゥバーの先駆者に意見をもらったり、製造で難点となっていたテンパリングの作業を安定化させるなど、製造工程を効率的に変えていきました。「私はズボラ(笑)。夫のほうが製造に向いている」と由子さんが言うと、ティムさんは「私は細かい手作業が苦手。由子たちの器用さに敵わない」と返します。商品開発が得意な由子さんと、エンジニア出身のティムさんのバランスが良いのです。
nicaoのチョコレートには、北海道の素材が1つ以上入っています。たとえばエスプレッソはニセコのカフェ・スプラウトで焙煎されたものです。ナッツやドライフルーツは、ニセコのオーガニック食品の専門店pyramから仕入れています。しかしチョコレートの味には存在感があり、北海道の素材の味とうまく共存させるのは簡単ではありません。試作を重ねて、素材とチョコレートの両方が活きる配合を探ります。現在取り組んでいるのが、倶知安産のジャガイモとのコラボレーション。「組み合わせを妄想しているときが一番楽しい!」と、由子さんは弾ける笑顔で語ってくれました。
最後に素敵なエピソードを一つおすそ分けしましょう。チョコレートの包装を金色にしたのは、イギリスの児童小説『チャーリーとチョコレート工場の秘密』のゴールデンチケットが由来。世界でたった5枚の幸運を掴んだ子どもたちは、チョコレート工場に招待されるという物語です。「ティムが子どもたちに英語で読み聞かせていたお話。幸運をシェアする、という考え方が素敵で」と由子さん。その話を聞いたこちらまで、少しほっこりとした気持ちになりました。
チョコレートと北海道の素材を組み合わせて、好奇心や遊び心を添えて…。nicaoのストーリーは、ニセコに留まらず大きく広がっていきそうです。
■商品紹介
nicaoの9つのフレーバーを試せる、薄いスクエアタイプのカレセットをお届けします。
・70% ダーク
最もオーソドックスなダークチョコレート。初めての方におすすめ。
・70% 梅酒レーズン
ブランデー仕込みの北海道産梅酒に有機レーズンを漬け込んで。
・58% チリ&シーソルト
塩と唐辛子の辛味と塩味が、カカオの風味とよく合います。
・69% エスプレッソ
エスプレッソを練り込んでおり、深いコーヒーの味わいが感じられます。
・68% ラズベリー
ダークに有機ラズベリーを加えています。甘みと酸味のバランスが絶妙です。
・65% ハッコウジンジャー
ニセコのジンジャービアブランドの有機ショウガと唐辛子、レモン入り。
・50% ミルク
苦味を抑えた、食べやすい優しい甘さ。お子さんにもおすすめです。
・50% アーモンド入りミルク
ミルクチョコレートに自家焙煎アーモンドをトッピングしています。
・35% ホワイト
カカオ豆から抽出したカカオバターに、北海道産全粉乳を加えて。
■作り手 nicao(倶知安町)
左からブレイク由子さん、ティムさん、由子さんの友人でワークショップなどを担当する中谷沙友里さん。現在は3人体制で運営しています。
■商品詳細
賞味期限:製造より6ヵ月
原材料:
・70%ダーク/グアテマラ産カカオ豆、北海道産甜菜含蜜糖、バニラビーンズ
・70%梅酒レーズン/グアテマラ産カカオ豆、北海道産甜菜含蜜糖、カリフォルニア産有機レーズン、北海道産梅酒、バニラビーンズ
・58%チリ&シーソルト/グアテマラ産カカオ豆、鹿児島産洗双糖、北海道産海塩、ニセコ産有機唐辛子、バニラビーンズ
・69%エスプレッソ/グアテマラ産カカオ豆、北海道産甜菜含蜜糖、コーヒー豆、バニラビーンズ
・68%ラズベリー/グアテマラ産カカオ豆、北海道産甜菜含蜜糖、有機ラズベリー、バニラビーンズ
・65%ハッコウジンジャー/グアテマラ産カカオ豆、北海道産甜菜含蜜糖、バニラビーンズ、北海道産生姜、有機レモン、有機唐辛子、糖蜜
・50%ミルク/グアテマラ産カカオ豆、北海道産粉乳、鹿児島産洗双糖
・50%アーモンド入りミルク/グアテマラ産カカオ豆、鹿児島産洗双糖、北海道産粉乳、カリフォルニア産アーモンド、バニラビーンズ
・35%ホワイト/グアテマラ産カカオ豆、鹿児島産洗双糖、北海道産粉乳、バニラビーンズ
セット内容(内容量):9枚(5ℊ)
■宅急便60サイズ発送(常温)
5セットまで同一の送料でお届けします。
※夏季(5〜10月)は冷蔵発送となります。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後7営業日で発送予定。
■熨斗
対応不可