■林業を知ってもらうために始めた鉛筆づくり。
(取材・文/山口翠 スロウ76号掲載)
誰にとっても馴染み深い鉛筆という文房具を、道産材を使って手づくりしている人がいます。「まちまちえんぴつ」の屋号で活動する五十部有紀さんと夫の小笠原浩平さんです。2人は仕入れた木材の加工から、製品化までのすべての工程を一つひとつ手作業で行っています。
五十部さんが鉛筆を作り始めたのは、林業関係の仕事に就いていた3年前のこと。使う人の手元に届くまでにいくつもの工程を踏むことで成り立っている林業。暮らしに欠かせない産業にも関わらず、「どこから、誰の手によって運ばれてきたのか」に関心を持てる機会は、そう多くはありません。「林業のことをもっと多くの人たちに知ってもらえないだろうか。林業のへの理解を深めるために、自分ができることは何だろう」。そう考えた五十部さんが辿り着いたのが、身近な木材を使った鉛筆づくりでした。
なぜ鉛筆だったのかと言えば、鉛筆こそ「最も身近な木材製品だと思った」から。「自分で何かを書(描)く鉛筆だから、使う人に寄り添えるのではと思って」。目指しているのは、「顔の見える」製品づくり。ゆくゆくは、材の生産地だけではなく、伐採から運搬、製材、加工など製品化までの仕事に携わるすべての人たちを辿れるようにするのが目標だと話します。
■木と野鳥の物語をパッケージに描いて。
最初の頃はトドマツの材を使って始めた鉛筆づくり。次第にほかの材も安定的に仕入れられるようになったことから、扱う樹種が少しずつ増えてきました。一般的な鉛筆よりも少し太く、木材そのものの色味や質感を感じられるまちまちえんぴつの製品。「イチイってこんなに赤いんだ」。「トドマツってサラサラっとした肌触りなんだね」。こんな風に、実際に使ってみることで、新たな気づきを得ることができるのも、楽しみのひとつです。
今年の2月にはパッケージを一新。より多くの人に手にしてもらえるように工夫をしたのだと、五十部さん。ラインアップは、釧路市近隣の市町村で伐られたトドマツ、ハンノキ、サクラ、イチイの4種類。パッケージにはそれらの木と愛らしい野鳥が描かれています。「木だけ
だと、つまらないかなと思って。鳥に木を紹介するアンバサダーになってもらいまいした」。揃って大の野鳥好きな2人のこと。今回も登場させる鳥を選ぶにあたって、ひとしきり盛り上がったのだそう。そんなエピソードからも、2人の木や鳥へかける愛情が伝わってきます。
もちろん、デザインが可愛らしいだけではありません。裏面には木の伐採から製材までの仕事の流れがイラストで紹介されていたり、鉛筆の製造工程や、木や野鳥の生態を紹介する小さな紙が同封されていたり。鉛筆を通して林業や自然に興味を持ってもらうための仕組みづくりも欠かさず行っています。
聞けば、5種類目の鉛筆も構想中とのこと。一体どんな風合いの鉛筆が出来上がって、パッケージにはどんな物語が描かれるのでしょう。うれしい報せが届くのを心待ちにしたいと思います。
■商品紹介
樹皮は濃い茶色ですが、材はやわらかいこげ茶色。
春。サクラの花の根元をくわえて、蜜を吸うスズメ。サクラにとっては迷惑行為かもしれないけれど、花をまるごとくわえる姿は何ともカワイイものです
■作り手 まちまちえんぴつ(釧路市)
代表の五十部有紀さんと夫の小笠原浩平さん。それぞれ別の仕事をする傍(かたわ)らで、活動を行っています。写真は、鉛筆づくりの拠点である釧路工業技術センターの作業場にて。まるで漫才をしているかのように息ぴったりの2人。
■商品詳細
商品サイズ:約0.7×0.7×17.2cm
商品内容:四角えんぴつ×3
■クリックポスト185円
※15セットまで同一の送料でお届けします。
※お届けまでに時間をいただく場合があります。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後5営業日で発送予定。
■熨斗
対応不可