■家族4人で作り上げる 豊かな恵みを享受するパン
本誌13号の巻頭特集「噛みしめるパン」で取材して以来、15年ぶりの登場となったニセコ町の奥土農場。
月日が流れる間に、観光客や移住者の増加によってニセコの景観は劇的に変化しました。真新しいホテルやコンドミニアム、別荘が立ち並びます。そんな中でも奥土農場のパンづくりは、15年前と大きく変わっていません。
夏から秋にかけては畑でライ麦や札幌八列トウモロコシ、ジャガイモ、カボチャ、光黒豆といった作物を育て、それらを使ってパンを作るのに大忙し。農閑期は窯と自宅のストーブで使う薪を割り、ライ麦や小麦を製粉し、トウモロコシの実をもいだり、無添加のベーコンやハムを造り、キノコの原木栽培の準備まで…。雪の降る日も毎日、「やることがいっぱいあるんですわ」と楽しそうに笑うのは、奥土盛久さん。15年前と変わらない口調で、よどみなく農と食への熱い思いを話してくれました。
■緊張感のある朝、気持ち穏やかな午前。
奥土農場は盛久さんの他、妻の敦子さん、三男の雄己さん、2008年頃からは長女の雅代さんが加わり、現在は4人体制で営んでいます。毎朝、最初に焼き始めるのはライ麦パン。今の石窯を使い始めて20年以上、変わらず同じルーティンです。石窯に火を点けるのは盛久さんの担当。冬場は3〜4時、夏の早いときは2時から作業を行います。炭をかき出し、石窯にパンを入れるのは8〜9時頃。ハード系のパンが一通り焼き上がるまでは気を抜けません。盛久さんが感覚を掴むまでは、ピリピリとした緊張感が漂います。
写真上/ライ麦パン。
お昼に近づくと石窯の様子は落ち着き、工房の雰囲気は心地良いものになります。締めるところは引き締めて、緩めるところは穏やかに。ちょっとした冗談で笑い合い、表情も豊か。盛久さんと敦子さんを中心に、店番をしていないときは雅代さんも加わって、会話が弾みます。雄己さんはコツコツと手を動かしつつ、絶妙なタイミングで突っ込みを入れるバランサーです。
それでも、とうもろこしパンや黒豆パンなど焼き上がりの時間が近づいてきたら、少しずつ緊張感が戻ります。種類によって焼く時間は決まっていますが、窯の状態、パンの様子によって追加の焼き上げが必要になることがあります。盛久さんは焼き上がったパンを触りながら首を傾げて、「これはもうちょっとやね」と、もう一度石窯へ。外側は焦げず、内側にはしっかりと火が通るように。焦げる手前のギリギリを求めて。頼りになるのは経験と勘です。
写真上/ぶどうくるみパン。
朝のピリッとした空気の中で焼き上がるライ麦パンには鋭い個性を感じるし、後半の柔らかな雰囲気で焼き上がるかぼちゃパンには包容力があります。どちらにも共通するのは、外側は薪の香りが感じられて、中はふわっとしっとり、素朴な味だということ。飽きのこない、毎日の食卓にぴったりのパンです。
■役割は少しずつ移行。4人だからできること。
71歳になった盛久さんと67歳の敦子さん。気持ちは元気でも、身体能力の低下を感じ始めているそうです。自然と息子の雄己さん、娘の雅代さんに多くの役割が移っていました。
たとえば、窯の中で赤くおこった炭を、「トンボ」のような木製の棒でかき出す作業は雄己さんが担当。最近は炭を横にかき分けるタイプの石窯が多いですが、奥土農場では外にかき出す手法をとり続けてきました。パンの中を乾燥させずに、水分を残して焼き上げるためには不可欠なのだとか。300〜500度にもなる窯に対して、軍手ひとつで挑む重労働です。その他にも薪割りや畑の力仕事は雄己さんが担っています。
そんな雄己さんが力を入れているのが、パイやタルトといったお菓子の製造です。5〜6年前、かぼちゃパイの商品化に挑戦したことがターニングポイントとなり、アップルパイや洋ナシのパイ、タルトなどを次々と開発してきました。盛久さんもパイやタルトの焼き上げは雄己さんに任せています。
店のこと、インターネットの販売、クッキーなど焼菓子の製造は雅代さんの担当です。最近はインスタグラムを開設し、毎日欠かさず更新。商品の紹介以外にも、食卓や農場の仕事など奥土家の暮らしを綴っています。「小学生の頃は『なんでうちだけ…』と思ってしぶしぶ手伝っていたけれど、中学、高校生になると、両親が何げなくやってきたことの凄さや魅力がわかってきました」。高校を卒業してすぐ、たった一人で百貨店の物産展にパンを売りに行くほど、販売の仕事が好きな雅代さん。パンのおいしい食べ方を語り始めると止まりません。
写真上/アレンジはいろいろ。ライ麦パンは無塩バターを塗って焼き、クリームチーズの上にお好みのジャムをのせて。
4人でうまくやっていくコツを聞いてみると、「我慢せず言い合うこと」と返ってきました。心優しい奥土一家ですが、全員が自分の主張を曲げず、妥協はしません。石窯とパンの焼き上がりは盛久さん、酵母や仕込みは敦子さん。雄己さんはパイやタルト、雅代さんは焼菓子。それぞれが責任を持って作り上げています。「言いすぎると落ち込むから、たまには持ち上げてあげないといかんのですわ」と話す盛久さんは、やっぱり大黒柱。4人が揃うことで、今日もおいしい石窯パンが焼き上がるのです。
■ハードパンお試しセット
・ライ麦パン
自家栽培のライ麦全粒粉を8割使用。キャラウェイシードの香りが特徴的です。
・ライ麦カンパーニュ
自家栽培のライ麦全粒粉が5割。アヒージョやレバーペーストとの相性が良いです。
・開拓者のパン
奥土農場のジャガイモをたっぷり練り込んでいます。焼いてチーズをのせると絶品。
・ぶどうくるみパン
小麦の風味が香ばしいパン。トーストして、無塩バターをたっぷりつけるのが奥土流。
■作り手 奥土農場石窯パン工房(ニセコ町)
農家でありたいという思いを胸に、40年以上にわたって暮らしてきた奥土さん。農家だから小麦を作り、小麦を売るためにそれをパンにしました。盛久さんが180日以上かけて造った大きな石窯は、今も現役。薪を入れ、火を起こし、静かにパンを焼き続けます。
■商品詳細
セット内容:ライ麦パン、ライ麦カンパーニュ、開拓者のパン、ぶどうくるみパン×各1
原材料:
・ライ麦パン/ライ麦全粒粉(小麦:北海道産)、小麦粉(北海道産)、レーズン、クルミ、塩、キャラウェイシード、天然酵母
・ライ麦カンパーニュ/ライ麦全粒粉(北海道産)、小麦粉(北海道産)、塩、キャラウェイシード、天然酵母
・開拓者のパン/小麦粉・全粒粉(小麦:北海道産)、じゃがいも(北海道産)、ヨーグルト(北海道産)、塩、三温糖、天然酵母
・ぶどうくるみパン/小麦粉・全粒粉(小麦:北海道産)、レーズン、くるみ、塩、はちみつ、天然酵母
賞味期限:解凍後約5日
■宅急便60サイズ(冷凍)
1セットまで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後7営業日で発送予定
■熨斗
対応可
対応可能な熨斗は以下の通りです。ご希望の方は備考欄に記入してください。
・祝いのし紅白蝶結び
・祝いのし10本紅白結びきり
・祝いのし5本紅白結びきり
・仏のし黒白結びきり
・仏のし黄白結びきり