■自然の移ろいを感じる12ヵ月。
(取材、文・仰木晴香/スロウ77号掲載)
いきいきとした植物や動物、鮮やかながらも落ち着いた色づかい。「版画」と聞いて思い浮かぶのは板をゴリゴリと彫る音や刷り上がった線の強弱といった力強いイメージでしたが、こだまみわこさんの作品を見たときに感じたのは、のびのびとした柔らかさでした。
子どもの頃から絵を描くことが好きで、大学では油彩を学んでいたこだまさん。卒業後は札幌市で美術専門学校の講師を務めながら作品の制作を続けていましたが、段々と絵に対して「うまくいかない」という悩みを感じるように。どこか別の場所で、もう一度「描く」ことを考え直したい。そんな気持ちを抱えながら訪れた平取町で、廃校アトリエに出合います。トントン拍子で話が進み、「ゼロからやり直してみよう」と、札幌から平取へ移住。そこで知り合った版画家に誘われたことがきっかけで、版画での作品づくりを始めました。
版画は「彫って刷るという手順があるから区切りがつく」ところが自分に合っているのだとこだまさんは言います。油彩では目の前のものを写実的に描いていましたが、描き込み過ぎて何が正解なのかわからなくなってしまったことも。一方で版画は一度彫ってしまうと元には戻せず、刷ることで初めて作品として完成するもの。加えて専門外だったこともあり、本物らしさに捉われず純粋に楽しいと思う図柄を作ることができました。版画という表現技法はこだまさんの心にしっくりと馴染み、心地良く「描く」ことができるようになったのです。
■身近にある自然の「気配」を描き出して。
表現するもの自体にも変化がありました。何を描くかよりも全体のバランスを大切にするようになり、自由なテーマで描けるようになったそう。モチーフとして選ぶのは、描くときに感情が入り込みやすい、日常にあるもの。自然豊かな平取では、動物や植物が身近な存在。いつの間にか自然を描くことが多くなっていったと言います。平取に来て、自然の中に身を置いていることで、札幌にいた頃は見つからなかった「描きたいもの」に出会えたのです。
今回紹介するカレンダーに描かれているのも、身近な動物たちです。こだまさんが平取で実際に出合った動物も登場するそう。「9月に川で、足元をサケが上ってくるのを見たりして。この時季にはこんな動物を見たなって思い出しながらデザインに入れるんです」。そこでも、こだまさんが大切にするのは、動物自体を上手に描くことではなく、一枚の絵として見たときの気持ち良さです。4月には春の訪れへの喜びや新緑の柔らかさが。9月には初秋の落ち着いた雰囲気や実りの豊かさが。色の組み合せや構図がきれいに調和して、全体を眺めたときに季節ごとの空気感がしっかりと伝わってきます。
「気負わずに毎年作り続けていきたい」と話してくれたこだまさん。無理なく自然体。そんなこだまさんの伸びやかな感性で表現された自然の中の動物たちは、日々の暮らしにほっこりとした彩りを添えてくれるはずです。
■商品紹介
今回のために描き下ろされた新しいデザイン。数字や文字の一つひとつも全て手彫りし、手刷りで仕上げた作品です。こだまさんらしい色やモチーフの組合せで表される四季の移ろいをお楽しみください。
■作り手 こだまみわこさん(平取町)
約30年ほど前に平取町へ移り住みました。一緒にいて気持ちの良い、飾らない笑顔の自然体な人です。
■商品詳細
商品サイズ:B4判(縦36.4×横25.7cm)、リング綴じ製本、片面刷り13ページ
紙質:アラベールF5
■送料込み(定型外郵便)
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後5営業日以内で発送予定。
■熨斗
対応不可