■井澤農園のさつまいもと玉ねぎのセット
(文・仰木晴香/スロウ81号掲載/とっておきのレシピ、教えてください)
秋の味覚といえばさつまいも。「ほくほく」や「ねっとり」など品種によってさまざまな食感があり、食べ比べが楽しい野菜です。九州地方が名産というイメージがありますが、実は最近では、北海道での栽培量が増えています。
栗山町で畑作農家を営む、井澤農園の井澤孝宏さんと綾華さん。約100品種の野菜を栽培し、中でも玉ねぎは10品種、じゃがいもは4〜7品種と、特に力を入れています。「同じ野菜でも何品種も作ることで、収穫と出荷の時期をずらすことができ、リスク分散にもなるんです」と教えてくれた綾華さん。さまざまな作物を育てることで幅広い農業の技術の取得にもつながり、品質の向上にも繋がるのだと言います。
写真右/取材の日はちょうど、玉ねぎの収穫が始まったばかり。例年よりも収穫時期が早まったのだと教えてくれました。玉ねぎは、化学肥料と農薬の使用量を抑え、有機肥料をたっぷり与えた特別栽培。連作可能な作物ですが、足りない成分を毎年きちんと与えることで、安定した収量を保っています。長年作り続けてきたからこそ、肥料設計や畑の起こし方一つとっても、確かな技術が蓄積されています。
そんな井澤さん夫婦にとって、新たな品種や野菜の栽培への挑戦は楽しみの一つ。「おばあちゃんが好きだから」という理由から、さつまいもづくりにも取り組むようになりました。段々と品種を増やし、現在では7品種に。「いろんな種類を作れるのはうれしい」と、笑顔を見せます。
■食を支えてくれる農家を応援したくて
子どもの頃から食べることが大好きだった綾華さん。家の近くの畑で野菜を育てていた経験から、食に対する興味を持ち続けていました。「畑は私にとって遊び場で、身近な存在でした。ただ家庭菜園に近かったから、農家に対する意識はそれほど強くなかったんです」。
転機が訪れたのは、大学生の夏休みでファームステイへ参加したとき。そこで綾華さんが出会ったのは、楽しそうに野菜を作り、誇りを持ちながら働く農家の姿でした。「ずっと食に関する仕事がしたいと思っていたけれど、その食は一次生産者がいるからこそ成り立つんだってひしひしと感じました。同時に、この現場をもっと知ってもらいたいと思ったんです。彼らの思いやストーリーを知ってもらえたら、野菜をもっとおいしく感じたり、心が満たされたりするんじゃないかなって」。食を支えてくれる農家に、スポットライトを当てたい。綾華さんの関心は農業へと広がり、在学中は農家と地域を盛り上げる活動に精力的に取り組みました。
卒業後は「より農家の近くで仕事がしたい」と、畑作が盛んな栗山町へ。地域おこし協力隊として地域の若手農家と関わる中で改めて、農家を応援することの大切さを確信します。「ファームステイで学生が来たり、活動発表の大会で全国位をとったりすることで、みんなのモチベーションが上がる瞬間を目にしたんです。顔つきが変わって、農業にもより真剣に取り組むようになって。そこで、農家を応援する取り組みはやっぱり必要なんだと、はっきりわかりました」。
技術を教えることはできなくても、農家をサポートすることはできる。学生の頃から持ち続けてきた思いが間違いではないことを実感した綾華さん。自身が農家になった今でも、その思いは変わりません。「農家のことを一番応援できるのは、農家の妻だと思うんです。側にいる妻が農家にスポットライトを当てられれば、農業はもっともっと面白くなるはずです」と、言葉に力を込めます。
■厳しい環境下でおいしいさつまいもを作るために
本来は温暖な地域で育つさつまいもにとって、北海道の寒さは厳しい環境。苗が定着しなかったり、収穫時期に霜が降りて収穫できなかったりと、栽培する上での課題は少なくないそうです。
そんな難しい条件の元、さつまいもを安定して作るために井澤農園が取り組んだことは二つ。一つ目は長期保存のために、キュアリング施設を導入したこと。倉庫を高い温度と湿度で保つことで、腐敗の原因となる傷がコルク化して保護され、冬の間も保管することが可能に。時間をかけて熟成させることで、より甘みのあるさつまいもに仕上がるそう。そして二つ目は、苗づくりを始めたこと。本州からの長い輸送で弱ってしまった苗を植えるのではなく、自ら苗を育てることで定着率をアップさせ、生産量の増加を目指しています。
写真上/さつまいもの長期保存を可能にした、キュアリング施設。さつまいもの収穫までは玉ねぎの保管庫として活用しています。
これらのチャレンジができるのは、井澤農園が元々苗づくりを行う農家であったことに加え、地域で協力してさつまいもづくりに取り組んでいるから。栗山町と由仁町の農家で2017年に結成した「そらち南さつまいもクラブ」は、この地域のさつまいもの生産者団体。新たな名産品を生み出したいという思いから、2つの町の名前から名付けた「由栗いも」を地域ぐるみで栽培し、ブランド化に挑戦しています。井澤農園も、そのメンバーのひとり。「各農家さんが共同で倉庫をリフォームしたり、苗づくりの技術を教え合ったり。みんなで勉強しながら頑張っています」。
今回はバラエティ豊かなさつまいもと、井澤農園が長年育ててきた自慢の玉ねぎをセットにしました。農業を心から楽しむ井澤さんが、愛情を込めて作り上げた野菜たち。まずはシンプルに蒸したり焼いたりして、それぞれのおいしさをじっくりと味わって。
■セット内容紹介
本州で育つさつまいもよりも時間をかけてゆっくりと育つことで甘みが増し、しっとりと育ったさつまいもと、栄養たっぷりで甘く、皮の色が濃いのが特徴の玉ねぎ。井澤農園自慢の野菜をお楽しみください。
・さつまいもの塩バターキャラメリゼ
さつまいもの甘みを活かしたシンプルなおやつ。さつまいも自体の糖分で、キャラメリゼのようなカリカリの表面に。さまざまな品種のさつまいもで作れば、カラフルで彩り豊かな一品に仕上がります。
材料 2人前
さつまいも…1本(約200g)バター…20g
塩…2つまみ水…適量
作り方
1.さつまいもを一口大の乱切りにし、鍋に入れる。
2.鍋の深さ5ミリ程度になるよう水を入れ、バター、塩を加える。蓋をして中火にかけ、沸騰したら弱火にし、10分蒸す。
3.さつまいもに竹串を刺し、火が通ったら蓋を取る。中火にして 水分を飛ばし、さつまいもの表面がすべてこんがりするまで、箸でひっくり返しながら焼く。
・焼き玉ねぎのピザ風
相性の良い食材を合わせてピザ風に。じっくり焼いて甘みを引き出した玉ねぎはとろりとした食感になり、野菜やチーズと溶け合います。お好みの具材でアレンジできるので、子どもとの料理からちょっとしたおつまみまで、シーンに合わせて幅広く楽しめるレシピです。
材料 4人前
玉ねぎ…1個 ピーマン…1/2個
ミニトマト…2個ベーコン…2枚
マッシュルーム…2個ケチャップ…大さじ4チーズ…40g
オリーブオイル…小さじ1
作り方
1.玉ねぎは皮を剥き、0.8 〜 1cmの輪切りにする。ピーマン、ミニトマト、マッシュルームは薄切りに、ベーコンは2mm幅に切る。
2.フライパンにオリーブオイルをひいて玉ねぎを入れ、中火で焼く。
3.焼き目がついたらひっくり返し、ケチャップを塗り、具材とチーズを乗せる。
4.蓋をして弱火にし、チーズが溶けるまで焼く。
■作り手 井澤農園(栗山町)
井澤孝宏さん、綾華さん、末っ子の宏哉くん。井澤農園の4代目として、父の代から作り続けてきた玉ねぎを中心に約100品種の野菜を栽培。4人の子どものママである綾華さんは料理研究家としても活動し、商品やレシピの開発にも取り組んでいます。
■商品詳細
セット内容(内容量):さつまいも4.5kg(3品種を1.5kgずつ)、玉ねぎ(2品種)4kg
■宅急便100サイズ発送(常温)
2セットまで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後10営業日で発送予定。
■熨斗
対応不可