(文・武田愛花/スロウ81号掲載/北のものづくり人)
キャンドルの温かい灯りがうれしい季節になりました。冬の日照時間が短い北欧では、長い夜を少しでも温かい気持ちで過ごすために、キャンドルを灯しながら過ごす風習があるようです。キャンドルが身近にある生活を北海道でも広めたいと、キャンドルづくりに取り組む人がいます。「草灯」の岡田あづささんです。岡田さんが作るのは、北海道の草花をあしらったアロマキャンドル。火を灯すと、まるで自然の中にいるかのような、優しいアロマの香りに包まれます。
岡田さんがキャンドルを作り始めたのは、アロマについて学んだことがきっかけでした。子どもの睡眠に悩んでいた頃、アロマが効果的だと聞いて取り入れてみたところ、寝つきがいつもより良くなったそう。効果を実感すると共に、「身体に関わるものだからこそ、しっかり学びたい」と思うように。それからアロマの種類や効能について詳しく学び、2012年にアロマテラピーの資格を取得。この知識を何かに活かせないかと考えたときに、思いついたのがアロマキャンドルでした。「北欧のキャンドル文化に憧れがあったんです。元々花が好きだったこともあり、花とアロマを組み合わせたキャンドルを作り始めました」。
花の中でも、素朴な雰囲気のものが好きだと話す岡田さん。作品にも、道端で見かけるような野草やハーブといった、身の回りにある植物を中心に使用しています。「セントジョーンズワートは精神的な疲れに効果があるとされていて、オカムラサキという品種のラベンダーは、キャンドルにした時に粒々に見えるのが可愛くて…」と植物について話す姿は楽しげ。キャンドルに仕立てるときも、素朴な雰囲気を大切に作っています。たとえば季節のハーブを取り入れたキャンドルには、大豆由来のソイワックスを使用。火を灯すと、柔らかな乳白色の中に、植物の美しいシルエットが浮かび上がります。草花の自然な雰囲気を表現したキャンドルは、主張し過ぎず、普段の生活にそっと馴染んでくれます。
さらに岡田さんが4年前から作り始めたのが、キャンドルを乗せる燭台です。好きな雰囲気の燭台が見当たらず、自分で作ろうと思い立ったのが始まり。夫の浩明さんが陶芸家として活動しており、制作環境が整っていたのも、制作に踏み切った大きな理由でした。「陶芸をやるのは何十年ぶりかのことで。夫からろくろの挽き方を教わったり、釉薬を調合してもらったりと、いろいろサポートしてもらいました」。
写真上/「創生窯」の屋号で活動している、夫・弘明さんの作品。北海道の自然をイメージし、釉薬を独自に調合しています。
岡田さんが一番好きな作業は、形の削り出し。ろくろで大体の形を成形すると、2、3日乾燥させて燭台の形に削り出します。決まった形のものは作っておらず、頭の中でイメージした形を思いのままに表現していくそう。そのため、脚のフォルムから高さまで、一つひとつ形が異なります。「決められた形を作ろうとすると、途端に楽しくなくなってしまうんです」と笑う岡田さん。あくまでも自分が作りたいものを追い求めて。燭台には、岡田さんの「好き」がとことん詰まっているのです。
そうして自分用に作り始めた燭台ですが、販売し始めるとキャンドルと並ぶ人気の作品になりました。キャンドルを乗せる使い方以外にも、アクセサリーや時計を置いたり、お菓子や果物を置いて使ってくれる人もいたりと、使い道はさまざま。「大切な物を乗せてくれるのがうれしい」と、喜びを語ってくれました。
写真上/岡田さんの自宅の庭。さまざまな植物が育っており、ここからキャンドルの素材を調達することも。いつか好きな野草やハーブだけの庭にするのが夢だそう。
岡田さんが作品を作る上で大切にしているのは、楽しい気持ちで作ること。「体調が悪かったり、気分が落ち込んでいるときは作らないようにしています。気持ちが作品にも伝わって、使う人にも届いてしまう気がするんです」。人の気持ちに寄り添い、癒やしを与えるキャンドルだからこそ、届ける側も心地良い気持ちでいるように心がけています。
道端でほころぶ草花のように、ささやかな癒やしをもたらしてくれるキャンドルと、その灯りを引き立ててくれる燭台。一日の終わりやリラックスしたいときに、気兼ねなく灯してほしいと岡田さんは話します。揺れる火を眺めれば、長い冬も温かく、豊かな気持ちで過ごせることでしょう。
季節のハーブと大豆由来のソイワックスを使用しています。パインやゼラニウムなどの天然精油をブレンドし、北海道の森をイメージした香りに仕上げました。2種類のサイズからお選びください。
写真上/オリジナルのギフトラッピングでお届けします。