■食べものを作ることの尊さを噛みしめながら
(文・仰木晴香/スロウ79号掲載/とっておきのレシピ、教えてください)
長い冬を越え、眩しい緑も目に馴染んでくるこの季節。畑からは段々と、カラフルな野菜の恵みが届き始めます。色とりどりの野菜たちを前に、どう料理して食べようかと考える時間も楽しみの一つ。そんなワクワクも一緒に届けてくれる、初夏の旬を詰め込んだ野菜ボックスができました。
石狩市花畔地区で、有機農業を営む小林卓也さん。年間で約60種類もの野菜を育て、夏には畑のすぐ隣で直売も行っています。
農家に生まれた小林さんが有機農業へと目を向けるきっかけになったのは、学生時代の経験でした。地球環境に対する問題意識、有機野菜を使う居酒屋でのアルバイトと、農業に関心を持つオーナーとの出会い。やがて、有機農業を通して農業や食べものの大切さを伝えたいと考えるようになった小林さん。
大学卒業後に本州の農業法人やオーストラリアの農家でファームステイしながら農業について学び、両親から借りた小さな土地で、枝豆とトウモロコシの栽培をスタートさせました。農業を始めてからずっと有機農業に打ち込んできた小林さんでしたが、結婚して子どもが生まれたことをきっかけに、農業に対して新たな考えを持ち始めます。
「1歳ぐらいになった子どもと目が合って。その時、何かのスイッチが入って、ある人に言われた『食糧を作れるのって農業だけですよね』っていう言葉が腑に落ちたんです。だからこそ農業って尊いのかと思って」。
農家である自分にとってはあたりまえだった、食べものを作るということ。けれどそれは、自分の子どもにとって生きる「糧」となる、とても重要なこと。農業という生業の大切さを感じると同時に、食料としての野菜の役割を意識するようになりました。
有機栽培であることだけでなく、効率良く作って生産性を高め、より多く供給する。そのために、野菜が健康に育つ環境を整えるのはもちろんのこと、世界の農業の最新技術などについても学び続けています。さらに重要だと考えているのが、地域として農業を維持していくことです。「農業って1人でできるものではなくて、地域あってのことなので。みんなで頑張ったほうが、農村は維持できるはずなんです」と、地域で直面している後継者不足の問題や、有機農業の認知の拡大にも向き合っています。
■身体が求める、「おいしい」野菜を作りたい
そんな小林さんが作りたいと思うのは、ひと言でいえば「おいしい野菜」。じゃあ野菜のおいしさって? 小林さんが考えるのは、「『今日はこの野菜が食べたいな』と感じるような野菜」です。「雪解け水が川に流れ始めて、野に緑が広がってくると、『アスパラガスを食べたい』って思う。そんな風に人が心の底から沸々と食べたいと思う、身体が求めるようなもの。その本能に応えたいんです」。
その日に自然と食べたくなるものこそ、身体が本当に求めているものではないか。そんな生きものとしての基本的な欲を満たせるような野菜を作りたいと、小林さんは考えています。そのために大切にしているのは、野菜が健康に育つ環境を整えること。
たとえば野菜が栄養を吸い上げる土壌には、鶏糞や近隣のきのこ農家の菌床、食品センターの残渣から造るたい肥を混ぜています。それぞれを発酵させ、手間暇をかけて良い状態に仕上げることで、養分が豊富な土づくりを行っています。野菜がもつポテンシャルを引き出すことで、有機栽培でありながら、おいしさや見た目の良さも加味した、高品質の野菜を作ることを目指しています。
写真上/小林さんが教えてくれた、じっくりと火を入れたカブの甘みを楽しめる「カブのソテー」。最後にカブの葉も入れ、カブから出た水分を絡めるのがポイント。
野菜づくりのその先にある、食べることについても重要視している小林さん。「野菜の水分の化学反応がもたらすうま味は、究極の料理です」と、その水分を調味料として活かし、日頃からさまざまな料理を作っているそう。肉や卵と炒めたり、天ぷらにしたり、低温でじっくり焼いたりと、シンプルにおいしくいただける食べ方を教えてくれました。共通するポイントは、良い油を使うこと。材料が少ないからこそ、調味料にはこだわるのが、おいしさの秘訣です。
写真上/「ズッキーニのラタトゥイユ」は、小林さんがよく作る料理の一つ。オリーブオイルをたっぷりと使うこと、蓋をなるべく開けずに野菜の水分をじっくりと引き出すことがコツ。
普段から野菜の直送を行っているはるきちオーガニックファーム。今回は平飼いで育てている鶏の卵も加え、はるきちオーガニッファームの魅力がぎゅっと詰まった、スロウオリジナルの野菜ボックスを作ってもらいました。発送日の朝に収穫する、採れたての野菜たち。そのときおいしい野菜を詰めるため、内容は届いてからのお楽しみです。
■商品紹介
6月にはアスパラ、白カブ、レタス、ほうれん草、7月にはキュウリ、ズッキーニ、ミニトマト、インゲンなど。旬のおいしい野菜と平飼いの卵を詰めてお届けします。卵は野菜と一緒に炒めたり、卵かけご飯にしたりと、シンプルな食べ方がおすすめだそう。
■作り手 はるきちオーガニックファーム(石狩市)
右から順に、小林卓也さん、息子の大洋くんと青葉くん、妻の芳見さん。野菜の直売や宅配は芳見さんの担当です。
■商品詳細
セット内容:野菜(5〜8種類)、平飼い卵(6個入り)×1
※7月下旬までの販売です。
※毎週火曜日までにご入金いただいたご注文分を、その週の木曜日に発送いたします。日付指定はできません。
■宅急便100サイズ発送(冷蔵)
1セットまで同一の送料でお届けします。
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■熨斗
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