■未利用だった魚の部位をおいしく活用
(文・仰木晴香/スロウ79号掲載)
魚を塩で漬け込み、発酵させて造る調味料、魚醤。よく知られているのはタイ料理で使われるナンプラーや秋田県のしょっつるですが、水産資源が豊富な網走でも、新たな魚醤が誕生しました。
その名も「ポンモイ魚醤」。造っているのは、網走の4人の漁師たち。普段漁を行っている地区の名前から、「ポンモイ」と名付けました。
「おいしいものには貪欲」な4人。魚醤づくりのきっかけは、代表の川内剛さんが趣味でアンチョビを造ったことでした。「その過程で出てきた魚の水分が魚醤に似ていたんです。でも実際は魚の身や内臓を発酵させて造るものだと教えてもらって」。つまり、傷やサイズを理由に廃棄となっていた魚や、頭や内臓などの食べずに捨てられていた部分も活用できるということ。「せっかく獲ったものだから、捨てることに抵抗があったんです。発酵させておいしい魚醤ができるなら、やらない手はないと思いました」。
とはいえ、初めての魚醤づくりは試行錯誤の連続でした。最初は20リットルのポリタンクで仕込み、漁の終わりに集まっては手でゆすって魚と塩を混ぜ、発酵を進めるための作業を繰り返しました。漁師の仕事との両立は大変なようにも思えますが、「なぜかものすごく楽しかった」そう。途中で腐らせてしまったりと失敗もありましたが、水産会社や食品加工センターのアドバイスを受けながら、知識や造り方を学びました。6年目には安定して造れるようになり、ついに昨年、商品化を果たしたのです。春のニシン、秋のサケなど、漁で獲れた季節の魚のうち、出荷されないものを獲れたその日に加工。約1年かけて熟成させています。おいしいものを食べたい、届けたい。漁師という食に携わる仕事の中で抱いてきた思いは、利用されてこなかった魚や部位に新たな価値を生み出しました。
写真上/発酵によりどろどろに溶けた魚の層の下には、透明な層が。3回ろ過してこの層を丁寧に濾し出すと、それが魚醤となります。
うれしいことはもう一つ。食べた人の「おいしい」という声を、直接受け取れるようになったことです。「獲った魚は漁業組合を通していて、直接販売ができないんです。だから一次産業は消費者の声が届きづらい。だけどポンモイ魚醤を造ったことで、食べた人から声をかけてもらえる機会が増えました。直接顔を見ておいしいと言ってもらえることは、大きな原動力です」と、笑顔を見せます。
魚醤の多くは独特の香りが特徴ですが、ポンモイ魚醤はクセが少なく、さまざまな料理に気軽に使うことができます。餃子のタネやタレに足したり、鍋やおかゆにひと垂らししたり。ナムルやチャーハンを作る際、塩や醤油を加える代わりにポンモイ魚醤を使えば、コクのある塩気でいつもとひと味違う一品に。料理に深みを与えてくれる、万能調味料です。
■商品紹介
サケやニシンなど、季節により異なる魚のポンモイ魚醤をお届け。いつもの料理やタレにひと垂らしするだけで、味に深みが出ます。醤油よりも塩味が強いので、入れ過ぎないように気を付けて。
オリジナルボックスに入れてお届けします。
■作り手 合同会社ポンモイ(網走市)
左から、木村晋太郎さん、山崎大樹さん、川内剛さん、武田耕一郎さん。4人とも網走で生まれ、親や祖父の跡を継いで漁師になりました。
■商品詳細
賞味期限: 製造より1年
原材料: