■白樺樹皮とエゾシカ革の小物入れ
(取材・文/立田栞那 スロウ70号掲載)
「はじめまして」。仕事で出会ったある男性が、名刺交換の際にポケットから取り出したのは、白樺樹皮で作られたカードケース。思わず「素敵ですね」と声をかけ、すっかり話が弾んでしまいました。
素材は、白樺樹皮とエゾシカの革。作り手は、かごあみ絲の小林紗織さんと、aminaの吉田亜美さん。2人の作家が出会い、素敵なコラボ作品が誕生したのは、今から4年ほど前のことです。
写真上/amina+の吉田亜美さん。
「札幌で開催されていたイベントで、絲さんの作るかごを見たのが最初の出会い。作品がとっても素敵で、こんな作家さんいるんだ! 会ってみたい! と思いました」。吉田さんの念願叶って、小林さんと直接会えたのは、翌年に開催された同じイベントでのこと。
実際に会って話をしてみたら、なんだかとても気が合って、2人はたちまち意気投合。吉田さんの店舗で小林さんのかごを販売したり、お互いの工房を訪ねたりと、親交を深めていきました。
写真上/かごあみ絲の小林紗織さん。
■植物や動物由来のものづくりと、中川郡という共通点。
「お互い、北海道の植物や動物由来の素材を使っていることもあって、ものづくりに対する感覚が近かったんだと思います。それから一つ、面白い共通点があって。北海道内に、『中川郡』って2つあるんですよ。私は『中川郡幕別町』、絲さんが暮らすのは『中川郡中川町』。絲さんの工房に行ったとき、中川町っていいところだなと思っていたのもあり、これは、中川コラボをしなくっちゃって」。
何を作るか考え始めたときから、2人の思いは同じ方向へ向かっていました。「日常の中で気兼ねなく使える道具。それから、男女問わずに使えるシンプルなデザインのもの」。その軸を中心に、相談を重ねて誕生したのが、カードケースと、ペン・メガネケース。「毎日のように使う道具として、何度も触れて、素材の魅力を感じてほしい」という思いも込められています。
「男性に持ってもらえるかごづくりを目標の一つにしているのですが、このコラボ作品は、男性が手にとってくれる機会が多くて。日常使いできる小物にこだわりを持つ方が多いような印象を受けました。今回のコラボが、自分のかごづくりをひとつ切り拓いてくれた感じがします」とは、小林さん。確かに、名刺入れやペンケースは人目に触れる機会も多いアイテム。個性やセンスを発揮するにはぴったりの、大事なお洒落ポイントと言えそうです。
もちろん、見た目だけではなく、道具としての実用性も抜群です。「白樺樹皮は、マチや土台がしっかりある厚みのある小物づくりに向いていますが、何度も開け閉めする蓋に使うには、強度面がちょっと心配。蓋にシカ革を使うことで、その心配がカバーされました。白樺樹皮もエゾシカ革も自然界に存在する素材なので、元々丈夫。それぞれのパーツに適した素材を使ったことで、より良いものが作れたと思います!」。
写真上/エゾレザーワークスの長谷さん(写真右)。
吉田さんが扱うエゾシカの革は、エゾレザーワークスの長谷さん(本誌65号掲載)から仕入れたものです。「いただいた命を無駄にしたくない」と、エゾシカを撃つところから、革の加工・小物制作まで自らの手で行う長谷さん。「長谷さんから仕入れたシカ革は、繊維がとてもしなやかで、筋肉質で、自然界で生きていた様子が伝わってくる。そんな革の表情を活かしたいと、いつも考えています」と、吉田さんは話してくれました。
最後に、今回のコラボを振り返っての感想を2人に尋ねてみました。返ってきたのは、「お互いの工房が離れているところ以外は、いいことしかない(笑)」という答。道北の中川町と十勝の幕別町は、車で5時間ほどの距離にあります。試作品の受け渡しなどに時間はかかってしまいますが、時にはどちらかの工房で「合宿」しつつ、「素材も自然のものどうし。無理せず、ゆっくり育てていこうね」と完成に辿り着いたそうです。
白樺樹皮とエゾシカ革の小物入れ。手にしたときに、心がじんわり温かくなるのはきっと、2人の関係性とものづくりに対する誠実な思いが隅々まで込められているから。初対面の人と挨拶をするとき、筆記用具を取り出すとき。その手触りと風合いが、気持ちを優しく緩めてくれるでしょう。
■ポイント1 世界にたった一つの小物入れ
シカ革の表面の傷や銃痕は、エゾシカが生きていた証の一つ。吉田さんは、シカ革を切り出す
際、傷や銃痕も素材の個性として活かせるように心がけているそうです。白樺樹皮もまた、樹
によって色味や風合いが絶妙に異なるため、全く同じ見た目の作品は一つとしてありません。その小さな傷には、エゾシカと白樺が辿ってきた物語が込められています。
写真上/上のほうに空いている小さな穴が銃痕。吉田さん曰く、個体によって、革の柔らかさや触り心地も異なるそう。
■ポイント2 経年変化を楽しむ
「シカ革も白樺樹皮も、育っていく素材」なのだと、2人は言います。素材の触り心地は使い込むほど、それぞれしなやかに、柔らかく。見た目の変化としては、シカ革はなめしに使うタンニンが出てきて、色味が濃く深くなっていきます。白樺樹皮は、色味が大きく変わることはないそうですが、人の手の油分でツヤが出て深みのある味わいに。
写真上/経年変化した色。なめし剤に含まれるタンニンが日光に反応することで起こる変化で、革を着色しない「ヌメ革」が最も大きな変化が出ます。
■ポイント3 細部に残る作り手の思い
ケースに使われる金具には、すべて当て革が。白樺樹皮に負担がかかり割れてしまうことや、中に入れるカードケースやメガネに直接金具があたって中身が傷付くのを防ぐ効果も。作り手ならではの、きめ細やかな工夫が施されています。
写真上/いずれも、本体に使った残りの革を活用するため、本体で選んだカラーと同じ色のシカ革が使われます。
■商品紹介
タテ型、ヨコ型共にサイズは同じで、ペンが7本収まるサイズ感です。タテ型をメガネケースにするのも、ヨコ型をペンケースにするのも良し。好みに合わせてご使用ください。
■カラー
ヌメ(茶色)、黒の2色展開です。
■作り手 amina(幕別町)
Yoshida Leather Worksとして活動していましたが、2021年11月、店舗移転と共にaminaへ屋号変更。幕別駅前の店舗兼工房で革小物の制作と雑貨販売を行っています。
■作り手 かごあみ絲(中川町)
2017年に中川町へ移り住み、地域おこし協力隊を経てかご作家の道へ。中川町近郊の野山で自ら調達した根曲がり竹や樹皮を使って、作品づくりをしています。
■商品詳細
商品サイズ:縦約16cm×横約6.5cm×マチ約3cm
商品素材:
・本体/白樺樹皮 ・カバー/シカ革
カラー:
ヌメ(茶)、黒からお選びください。
※赤、ネイビーは数量限定となります。
■レターパックプラス発送(常温)
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■お届けまでの時間目安
ご入金確認後32営業日で発送予定。
■熨斗
対応不可