玉山さんは今、地元の七飯町で暮らしながら制作活動を続けています。
「フェルトってね、なんでもできるんですよ」。たとえばコースターのような平面的なものから、動物をモチーフにしたマスコットなどの立体的なものまで。ふわふわした質感を残したり、ぎゅっと丈夫に固めたりと、質感まで自由自在。「ホントに面白い素材に出合っちゃった」と、楽しそうに笑います。
幅広い作品を手がけた中で、玉山さんが気づいたのは、「羊毛と、土から育つ植物の相性の良さ」。そこにヒントを得て生まれたのが、羊毛フェルトの花瓶カバーです(別ページで紹介しています。)。
羊毛フェルトに包まれた花瓶に花を活けて、部屋の中の明るい場所へ。表面の細かな繊維が日の光に照らされて、花瓶全体が柔らかい光を纏います。丸みのあるフラスコの形も相まって、なんだか周りの空気までほんわりと丸くなったよう。きっと、この空気の変化こそが、玉山さんが言う羊毛の持つ不思議な「何か」。それはとても優しくて、温かくて、心を解きほぐしてくれるものでした。
写真上/カップをふわっと受け止めてくれるコースター。穏やかな形は、ふと目にするだけでなんだか心がほっとします。
しずくのコースターは5年ほど前、函館市の喫茶店・classicのために手がけた大切な作品です。今回2人にお願いして、通販の機会をいただきました。
「クラシックの店主の近藤伸くんが描くイラストに出てくる男の子の顔が、よーく見るとしずくの形に見えるなぁと思って。この形に決めました」。穏やかな形のコースターはほど良い厚みで、カップをふわっと受け止めてくれます。
張りのある羊毛と、繊細な羊毛を重ねてフェルト化させることで、フェルトの表情はより豊かに、より丈夫に仕上がるそうです。所々で色合いや質感が変わるので、もしシミができても目立ちにくいのがうれしいですね。
羊毛フェルトは、羊毛をチクチク刺したり、ゴシゴシ擦ったりしながら、人の手で繊維どうしを絡めて作るもの。行程の一部に石鹸水を使うものの、その他特別な材料は使いません。雨の日も、雪の日も、基本的に外で過ごす羊の毛から生まれたフェルトの小物は、水をよく弾いてくれます。