■暮らしの中で大切に育てる、日々に寄りそう器
牧野さんの器は、不思議だな。手に取るたびにそう思います。釉薬をかけてなお感じられる、しっとりと吸い付くような土の質感。包み込むようにして持つと一瞬ひんやりとして、手の平の熱でじわじわと温もっていく時間。そうすると、まるで器が身体の一部となって溶け込んでいくかのような気持ちになってきます。
切ないような、もどかしいような、懐かしいような。曖昧な感情がふわふわと拡散して、思考の海を揺蕩(たゆた)っていく感覚。けれどそれがとても心地よくて。この器にずっと触れていたい。傍にいてほしい。そんな素直な気持ちが、自分の裡側から滲み出てくるのを感じるのです。
誰かの手に渡り、使われることによって器が「育っていく」のだと、牧野さんは話します。 それぞれの日常、あたりまえの暮らしの一部になりたいから、mego の器はあくまでも「普段使いの器」であることに、軸を置いています。
素材となるのは、信楽の土に鉄分が混じったもの。独特の風合いを引き出す釉薬は、オリジナルで作り上げました。天然成分が含まれた釉薬はさまざまな環境の影響を受けるため、「出来上がりの表情が少しずつ違ってきます」とのこと。
■商品紹介
両手で包み込みたくなるサイズのスープボウルは、 小さな取っ手がアクセント。スープやサラダ、たっぷりの チャイやカフェオレ、デザートの器にもちょうど良い大きさです。
写真上/別売りのオーバルプレートと組み合わせて使うのもおすすめ。
写真上/カラーは3色。オプションで選択してください。
写真上/ギフト包装(無料)も可能です。オプションで選択してください。
■作り手 mego牧野潤さん(函館市)
牧野潤(めぐみ)さんのものづくりの根底には、家族との絆があります。出産からすぐに職場に復帰。仕事に打ち込む日々が続きます。しかし、目指していた試験は不合格。受験のタイミングで祖父が亡くなってしまったことが、少なからず影響していたでしょう。
「小さい頃は祖父母に育ててもらっていたから」。最愛の祖父との別れを前に、呆然と立ち尽くすしかなかった牧野さん。「これからどうしよう」。道は失われ、前にも後ろにも進めない。目の前が真っ暗に閉ざされてしまったような思いにとらわれてしまいます。
そんな時。小学生に上がる年頃のひとり娘が、牧野さんに言います。「ママ、笑って」。一気に目の覚める思いがした、と牧野さん。「子どもはいつだって親を見ている。そのことに気づいたら、急に怖くなった」。仕事に打ち込むあまり、甘えたい盛りのときに甘えさせてあげられなかった罪悪感が、ひしひしと胸に迫り、「本当に反省しました」と振り返ります。「それから、自分が今やるべきことは何なんだろうって考えたんです」。
これからは、娘と一緒に過ごす時間をたくさん作ろう。牧野さんはキッパリと仕事を辞め、娘がやりたいと言ったものを一緒に楽しむようになります。そんな日々の中で、ふと思い出されてきたもの。ずっと先の夢として心の奥底に仕舞い込んでいた、陶芸をやってみたいという気持ち。「ママね、陶芸をやってみたいの。あなたも一緒にやってくれる?」。こうして牧野さんは、娘と一緒に市内に住む陶芸家の元へ通うようになったのです。
「mego」とは、牧野さんの愛称。「メゴ」と呼んで可愛がってくれた祖父との温かな思い出から、屋号に。現在の作風は、長年かけて辿り着いたひとつの形。中高生のときから「古いものが好き」。しかも骨董品よりは、「ガラクタのほうが好き」。だから、いかにも新品といった佇まいのものよりも、「古さ」や「時間」が感じられるものを作りたいというところからのスタート。
とはいえ、思い通りにいかなことのほうが多いし、「それでいい」と牧野さんは言います。土、釉薬、焼成。気候や条件がほんのちょっと違うだけで、器の表情もがらりと変わるのです。
こうした、自分ではどうにもならない「自然の理に任せる部分」と、ろくろを使った成形など、全神経を集中させて行う「自分の力でできる部分」。そこに折り合いを付けながら、バランスを取っていくのが、牧野さんのものづくりなのかもしれません。
思ったものができなくても、それはそれとして受け入れながら、一つひとつと向き合っていく。そんな大らかな人となりが、伝わってきます。
■商品詳細
商品サイズ:口径約12.5×高さ約7.5cm
商品素材:陶器
備考:焼き加減によってサイズや色が多少異なります。自然の風合いとしてお楽しみください。
■宅急便80サイズ発送(常温)
4点まで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後3営業日で発送予定。
※在庫がない場合、1〜2ヵ月時間をいただきます。
■熨斗
対応不可