2021 Jan
22

歌才ブナ林の原生林-4

癒しを求めて、学びを求めて、人は森に誘われる。

齋藤さんは海の環境保全について学びたいと大学に進学したが、入ってみると造船や物理がメインのコース。「自分はもっと自然環境に関わる勉強がしたい」と思っていたときに出会ったのが、「日本一多くの木を植えた男」とも呼ばれる生態学者、宮脇昭さんだった。宮脇さんの退官前の最終講義を何気なく聞きに行って感銘を受け、「弟子にしてください」と押しかけたというから、齋藤さんの感動も分かろうというもの。退官した宮脇さんの後任の先生を紹介してもらい、学部生のときからその先生の研究室に入り浸って植物の研究調査にも同行するようになった。

 

その後、大学院のときにインドネシアの熱帯雨林の調査に赴く機会があったそうだが、そのときに自然破壊の現状を知って愕然としたそうだ。「自分が思い描いていた熱帯雨林のイメージとのギャップ、保護されている場所とされていない場所の環境のギャップに驚きました」。そのとき、齋藤さんは「元々の自然にこだわって、それを大切にしたいという気持ちを育てたい」という思いを抱いたという。そこから、「原生林」「環境教育」の分野に興味をシフトさせていく。ちなみに、大学院での研究対象は偶然にも伊豆半島の南限のブナだったそうだ。

それからも、節目ごとに引き寄せられるようにして、鍵になる人との出会いがあった。「出会いによって道が開かれていくような感覚がありましたね。研究や人生の面で本当にお世話になりました」と、齋藤さんは振り返る。

「ブナセンターは、森への誘(いざな)いの第一ステップ」と話す齋藤さん。ブナの森を「見る」だけでなくて、ブナで作ったおもちゃに「触れる」、ブナの木を使った楽器の音を「聞く」、ブナのチップで燻製を作って「香り」や「味」を楽しむ。「五感でブナを楽しむっていうのが、僕の心の中のテーマです」。その中で、できることから少しずつ取り組んでいるところだという。「触ってみて、次は食べてみてっていうふうに、だんだん思いが繋がっていけばいいなぁ」と、齋藤さんは語る。

まずはブナセンターでブナのこと、自然のことを知る。さらに詳しく知りたいと思った人は、原生林ツアーなどに参加してブナと親しむ。知ったうえで行動したいという人には、減少してしまったブナの森を再生させる取り組み、「ブナ林再生プロジェクト」に参加するのもいい。

眺めているだけでは分からなかった。ブナの木の感触も、乾いた葉が立てる音も、その場所で時を過ごせる幸せも。あの日に植えた種は、無事に芽を出しただろうか。優しく抱き止めてくれたブナの木は、今も元気でいるだろうか。―おしまいー(「スロウ vol.392014年春号掲載 取材・文/家入明日美)

歌才ブナ林の原生林-1
歌才ブナ林の原生林-2
歌才ブナ林の原生林-3
■歌才ブナ林の原生林-4

 

話の主は…

黒松内町ブナセンター

黒松内町字黒松内512-1

TEL.0136-72-4411

開館時間/9301700(木曜のみ2100まで)

休 館 日/月・火曜(祝日、夏休み期間は開館)

http://www.host.or.jp/user/bunacent

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.39 early summer 2014より

https://www.n-slow.com/books/books-150

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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