2021 Jan
28

恵庭幼稚園×北清建設-2

薪ストーブが教えてくれたのは、 未来に繋がるたくさんの可能性

不思議なもので、相澤さんにとってもその時期(2008年頃)は節目となるタイミングだった。創業以来、下請け70%、元請け30%の割合で事業を営んできた北清建設。しかしそれは、「どこに頼んでも同じ」仕事を、「お客さんに言われるがまま」に進めるだけの作業になりがちだ。必然的に、同業者間での価格競争が激しくなっていった。

このままではいけない。相澤さんの中には、そんな強い危機感が渦巻いていたことだろう。厳しい状況からの脱却を図るため、北清建設は「提案型の家づくり」へと大きく舵を切る。元々自然の中で身体を動かすことが好きだった相澤さんだから、行き着いた先もやはり「自然の法則に逆らわない、シンプルな家」。そんな家づくり、ひいては暮らし方を提案するうえで、薪ストーブはピッタリの商品だったといえる。  

ガスや電気に頼りすぎずに十分な暖を取ることができ、薪の香りや炎を見ることによるリラックス効果も高い。「自然のものに勝るものはありませんからね」と語る相澤さんの口調にも力がこもる。「不便な部分も楽しみながら暮らしていると、すべてのものに『ありがたみ』を感じられるんです」。気がつけば、1軒、2軒と薪ストーブを取り入れた家づくりの依頼が増えていった。

薪ストーブに力を入れるようになると、北清建設で薪ストーブの家を建てたオーナー達によって「薪割りの会」が発足された。北清建設が道具と場所、材料となる丸太(市内のゴルフ場でメンテナンスの際に伐採された木など)を提供し、薪割りに興味のあるオーナーが集まって薪割り体験を行う。自分で割った薪の0.4%を持ち帰れるというシステムで、春と秋の週末に開催しているのだそう。「女性やお子さんもたくさん来てくれて、コミュニティの輪が広がっています」。まさかこんな展開になろうとは、うれしい誤算だった。

そんな相澤さんの存在は、井内さんにとって心強いものだったことだろう。幼稚園に薪ストーブを導入する。そのために相澤さんに相談に乗ってもらう中で、安全性や効率性、薪の調達についても少しずつ道筋が見えてきた。そうするうちに、井内さんは薪ストーブの持つ別の「価値」に気づき始める。

今の子どもたちは、炎に触れる機会が絶対的に少ない。仏壇がある家庭も少なく、マッチでろうそくに火を灯すという経験さえほとんどしたことがないのだ。オール電化の住宅であればなおのこと、「生活の中に、炎が存在しない」。

火を見る機会がわずかながらもあるのは、花火やバーベキューなど夏の行事が大半。「けれど、炎は本来、冬に暖を取るためのもの。北海道の冬の暮らしに、必要不可欠なものだったはず。薪ストーブを知れば知るほど、北海道で生きる私たちの生活そのものが見えてきました」。

森から木を伐り出し、作った薪で熾した温かな炎に包まれて冬を過ごす。そこには、自らの生きる術を自分の力で切り拓くためのヒントと可能性があるのではないか。その炎が園児たちに与える教育的な効果は、どれほど大きいことだろう。「これなら、いける」。井内さんの中に確信めいた思いが芽生えていた。ーつづくー(取材・文/家入明日美 撮影/菅原正嗣)

■恵庭幼稚園×北清建設-1
■恵庭幼稚園×北清建設-2
恵庭幼稚園×北清建設-3
恵庭幼稚園×北清建設-4

 

話の主は…

恵庭幼稚園×北清建設

学校法人リズム学園恵庭幼稚園

恵庭市大町4丁目1-11 TEL.0123-33-2541

http://www.eniwa-youchien.com

ーーー

有限会社 北清建設

恵庭市黄金南3丁目1-17 TEL.0123-33-2032

http://www.hokusei-kensetsu.com

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.46 winter 2016より

https://www.n-slow.com/books/books-725

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

category