2021 Mar
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宮本夫妻の田舎暮らし-2

日々を大切に積み重ねて歩んできた、13年

「そういえば、父も大工仕事が好きだった」と、聞かせてくれたエピソード。弘夫さんのお父さんは、和寒から札幌に引っ越す際に屋敷林を伐り出して札幌まで運び、親戚の手を借りて自宅を造ってしまったという。「親父と同じことをやってるよね」。血は争えないと言うべきか。いや、さらにバージョンアップしている気もする。


それからも井戸を掘ったり、ピッツァ窯や燻製器、五右衛門風呂を作ったりといろいろなものがその手で生み出されていき、それらは暮らしの中でしっかり活躍しているとのこと。

 都会での暮らしから一番大きく変わったことは、自然が身近にある暮らしそのものだろう。空気がおいしいだとか景色がきれいだとか、それだけで幸せな気持ちになれると話す。

 豪雪地帯の喜茂別は、冬ともなれば積雪2メートルなんてよくあること。除雪はほぼ毎日する必要がある。けれど年に数回、朝食を食べる時間にダイヤモンドダストを見られるという。「最初は疑ってたんですよ。まさか違うでしようって。でもホンモノみたいで、うれしいですね」。そう言って、豊子さんはリビングの大きな窓の向こうに向けた目を、ゆるりと細めた。

 徐々に春らしさが増してくる3月、堅雪になった頃に弘夫さんは森に入って薪用の木を伐る。その場で輪切りにしておき、雪が解けるのを待って一輪車で運び出す。程よい大きさに割ったら、あとは薪棚でよく乾燥させる。宮本家にある2台の薪ストーブの貴重なエネルギー源だ。「最初の頃は薪が足りなかったのだけど、今では2年半分は余裕があるから、11月までに割っておけばいいかな」。

 

薪割り期間には少し余裕があるものの、春を迎えた北海道の植物たちの生長はとても早いから油断できない。4月はシラカバとイタヤカエデの樹液採集。樹液で淹れたコーヒーのほんのりと自然な甘さは、どこか優しい。その後は山菜の季節がやってくる。フキ、ワラビ、タラ芽、ギョウジャニンニク、ウド。保存できるものは塩漬けや味噌漬けにして冷凍しておく。

 今でこそスラスラと山菜の名前を口にする弘夫さんだが、喜茂別に来るまでは山菜もキノコも、それから野鳥の名前も全然知らなかったという。すっかりボロボロになった何冊もの図鑑にはたくさんの付箋が貼られていて、いろいろな書き込みがされていた。動植物の名前をひとつずつ知ることも、大きな楽しみになっていることだろう。ーつづくー(取材・文/家入明日美)

宮本夫妻の田舎暮らし-1
■宮本夫妻の田舎暮らし-2
宮本夫妻の田舎暮らし-3

話の主は…

宮本夫妻

*2016年、喜茂別町に、教育・研修のフィールドとして活用できる「道草森保全の会」を結成。

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.50 winter 2017より

https://www.n-slow.com/books/books-6152

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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