2018 Dec
19

神田日勝記念美術館-4

なぜ美術館をみて感動するのか?

神田日勝記念美術館は今年、開館25周年目にあたる。地元、鹿追町の有志により建設運動が進められ、1993年、鹿追町立神田日勝記念館として開館(2006年、現在の館名に改称)。

神田日勝の作品を収めるという明確な目的を持つ美術館であるため、建物にも大きな特徴がある。外観もさることながら、館内に入ると高い天井が目に入る。中世のロマネスク建築のようでもある。神田日勝の作品は100号を超える大作が多い。高い天井が作品を展示する上で不可欠な条件のように思われる。

展示室左手には広い階段がある。上るとそこにも作品、デッサンが展示されている。作品と共に目を引くのは、日勝のアトリエを再現したコーナー。絵の具箱を兼ねた机、本立て、雑誌や新聞の切り抜き、書きかけの作品などが興味深い。

階段を降りようとすると、「そこから奥に展示してある『馬』を見てください」と川岸さんが言う。階段のやや左寄りから降りると、未完の「馬」の左半分だけが見え、あたかも完成作であるかのような錯覚にとらわれる。半分隠れていると、残りの右半分を脳が勝手にイメージしてしまう。僕は一瞬、「馬」の全身を見たような気がした。この美術館にはそんな不思議な仕掛けが用意されていた。

2019年には日勝の50回忌、そして2020年には没後50年と鹿追町100周年を迎える。美術館としても川岸さんとしても、これからの2年間はもっとも力の入る期間と言えそうだ。

2020年には東京ステーションギャラリーと道立近代美術館での神田日勝展開催が控えている。作品がどのように展示されるか、今から楽しみだ。

北海道からは実にさまざまな芸術家や作家が誕生している。全国、世界で活躍中の人もいれば、地域の中で芸術・文化の発展に貢献している人も少なくない。

僕が今思うのは、今こそアートを中心とする表現活動の活性化が求められるのではないかということ。北海道命名から150年。地域の文化のありようを見直す段階に来ているように思われる。

生きていくのに精一杯だったのが開拓期の北海道だとすれば、次にやって来たのは、ひたすら経済的豊かさを目指す時代だった。

今は多くの人が経済的豊かさよりも精神的豊かさを求めている。物質的に十分満たされているわけではないだろうが、それでも「心の豊かさ」は物質的豊かさに勝るものと考えるようになってきた。

心の豊かさにもさまざまな形があるだろう。そのひとつとして、僕はアートに親しんだり、作品と向き合うことで自分と対峙する時間を過ごすことがあって良いのではないかと考えている。

川岸さんが指摘するように、芸術は「趣味的なもの」といった誤解がまだ根強く存在する。

川岸さんの出身地である金沢は、文化、芸術に対して理解のある歴史、風土を持つ場所だという。だからこそ、伝統とは対極にある現代アートの美術館が年間276万人(2017年度)も集める人気スポットとなったのだろう。

北海道の今後の150年はアートをはじめとする文化的環境を整備する期間なのではなかろうか?

そのためには、作家を育てたり、施設をつくることも重要だろう。しかし、それ以前に「アートに親しむ人を増やす」とか「鑑賞の仕方や理解を深める手助けをする」といった活動が欠かせない。川岸さんのような学芸員や地域の美術館の活動に期待するとともに、メディアの果たす役割も重要であるに違いない。ーおしまいー(取材・文・撮影/高原 淳)

神田日勝記念美術館-1
神田日勝記念美術館-2
神田日勝記念美術館-3
■神田日勝記念美術館-4

話の主は…

神田日勝記念美術館

鹿追町東町3丁目2 

TEL.0156-66-1555

開館時間 /10001700

休館日/月曜

http://kandanissho.com

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.55 early summer 2018より

http://www.n-slow.com/books/books-9266

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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