2021 Jan
28

北の大地の水族館-2

「いただきます」から考える人と魚のつながり。

北の大地の水族館では、魚の情報を楽しく伝える解説板(展示コーナー)も人気が高い。「伝えたい情報があって、それをどうやったら伝えられるかについては、徹底的に考えています」。スタッフの若さにも起因しているのだろう。工夫が凝らされ、クスッと笑わせてくれるような紹介ばかり。魚どうしが人間のようにメッセージを送り合うSNSを模した解説板や、幻の魚イトウが有名アニメのキャラクターに扮していたり。なぜ、そこまで楽しさにこだわるのだろうか。

「水族館は、楽しい場所でありたいと思っています」。それは、彼らスタッフがジレンマを乗り越えた先に見出した答だった。スタッフの全員が、魚のことをもっとたくさん知ってほしいと心の底から思っている。その反面、客のほとんどは水族館に楽しむため、あるいは癒やしを求めて来ている。この事実に気づき、向き合った末に考えついたのが、どこまでも面白い水族館づくりだった。

「今では、それは強みだと思っています」。晴れやかな顔で、山内さんは語った。「老若男女、何の目的もないのに来てくれる施設って他にないじゃないですか。だったら、せっかく来てくれる人を楽しませながら、魚への興味の入り口にしたい。そう思います」。

水族館の展示にはその場所ならではの「地域性」が反映されている場合が多い。それは、魚が生きていける水質が魚ごとに限定されているなどの根本的な理由とも関連しているだろう。ここ北の大地の水族館でも、冬の間おんねゆ温泉の水で熱帯魚を飼育したり、北海道の淡水魚に焦点を当てて展示をしていたりと、さまざまに工夫を凝らしている。

北の大地の水族館のメインである淡水魚には、奥深いメッセージが秘められているという。北海道の淡水魚の特徴は、サケ、ワカサギ、カジカなどのように、川と海とを行き来する魚がたくさんいるということだ。それはつまり、北海道の淡水魚は、「北海道の陸と海とを繋ぐ」存在であることを教えてくれているのではないだろうか。豊かな森や川がなければ、サケは生まれない。川がダムなどで寸断されることなく、上流まで繋がっていなければ、サケは帰って来ることができない。「いろんなことが結びついているということを、淡水魚を通じて感じることができます」。魚を「いただく」ということは、その行為を通じて、その魚が育ってきた川や海、すべてを含めた豊かな自然をいただくことにもつながっている。北海道の魚のおいしさを守っていくことは、自然を守っいくことにも、そのままつながってくる話なのだ。

海に囲まれた北海道。歴史の中でその土地の風土に合った郷土料理が生まれ、今日もどこかの家庭で食べられている。特定の種類の魚が激減してしまったり、逆に増えたり。魚たちの世界の「異変」について、ニュースで知ることが近年増えた。抱える問題は数多くあれど、まずは今晩、おいしく魚を食べてみようか。

「いただきます」の言葉から魚と人のつながりを伝えつつ、より楽しい水族館を目指して。小さな水族館の大きなムーブメントは、まだ始まったばかりだ。ーおしまいー(取材・文/石田まき 撮影/菅原正嗣)

北の大地の水族館-1
■北の大地の水族館-2

話の主は…

北の大地の水族館

北見市留辺蘂町松山1-4

TEL.0157-45-2223

営業時間/夏期 8301700

     冬期 9001600

休 館 日/夏期48日~14

     冬期1226日~11

http://onneyu-aq.com/

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.55 early summer 2018より

http://www.n-slow.com/books/books-9266

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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