2021 Jan
22

ひとりCSAショップ-2

「私のしていることは、お買い物ごっこの延長」

「相手がわかると気持ちのいいやりとりができますよね。間に入るのは私しかいないから、嘘がなくていいかなと思っています。店こそ一人で構えていますが、知り合いがどんどん増えて。昔、お店屋さんごっこってしましたよね。子どもの頃の『~屋さんになりたい』をあきらめちゃう人が多いけど、今は小さな規模なら実現できるかな」と、恵子さん。パンを売ればパン屋になり、本を売れば本屋になる。「100のことができたら素敵ね」。恵子さんは笑いますが、それもきっとそんなに難しいことではないでしょう。

移動販売は週に2回。決まった曜日、決まった時刻、決まった場所で開催しています。それに加えて、毎週金曜に必ず出店しているのが、小樽にある妙見市場の店です。小樽にはいくつかの市場がありますが、それも建物の老朽化や出店者の高齢化、何より客数の減少により、ひとつずつその灯りが消えていっています。小樽市役所に近い妙見市場もそのひとつ。現在営業しているのは、わずかに5軒。恵子さんは、市場自体も活性化させたいと、休憩室を使ったイベントなども開き、今まで訪れたことがない人にも来てもらえるよう呼びかけています。妙見ゼミナールと名づけた勉強会では、月に1、2回、憲法のこと、TPPのことなど、生きるのに必要な知識を学ぶ機会を設け、講師を招いて勉強しています。「次の打つ手を自分で考えられるように。生きることに真面目に向き合いたい」と話す恵子さん。

市場にはおいしい魚を扱う魚屋や干物屋、惣菜屋などがあり、恵子さんの店に立ち寄ったついでに買い物を、という人も増えています。そこでは必ず会話が生まれます。魚のおいしい食べ方から、最近の天気の話まで。食べる時には店の人の顔が浮かぶでしょう。そんな「顔」の見える経済活動が、恵子さんのやりたいことです。

私一人が、世界中の人を幸せにすることはできないかもしれない。でも、隣のあの人を笑顔にすることはできるはず。誰かが困っていれば、手助けすることはできるはず。たった一人の情熱があれば、それがやがて大きな動きになって、地域全体がいつしか変わる。それも夢ではありません。

恵子さんが差し伸べた手を誰かが取って、その手を別の誰かが取って…。それがいつしか輪になれば、みんなの顔が見えるようになります。その中で暮らしに必要なものが手に入るなら、そんな幸せなことはないように思えるのです。ーおしまいー(取材・文/鎌田暁子)

ひとりCSAショップ-1
■ひとりCSAショップ-2

話の主は…

ミリケン恵子さん

https://www.facebook.com/keiko.milliken

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.50 Winter 2017より

https://www.n-slow.com/books/books-6152

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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