2021 Jan
22

佐藤農場×坂東農場-1

おいしい=畑。農業者が伝える「農」の面白さ

小さなキッチンカーの周りに、子どもたちが次々と集まってくる。お目当ては、揚げたてアツアツのフライドポテト。

 芽室町の坂東農場で収穫されたジャガイモを、音更町の佐藤農場が生産するなたね油で揚げた「菜の花フライドポテト」。坂東俊徳さん、佐藤健司さんが共同開発したもので、数年前からイベントでの販売を始めた。

「農業の大切さを伝えたい」。そう言って笑みを交わす2人。代々農業を営んできた家の跡を継いだ坂東さんと、出身は音更ながら一度東京に出て、2008年に地元で新規就農した佐藤さん。十勝の異業種仲間が集まる会で初めて会ったその日、お互いの仕事を知って、「フライドポテトが作れるね~」と冗談混じりに話していたらしい。農業の価値を、たくさんの人に伝えたい。農業を通して、面白いことをやりたい。2人は「同年代で、思いを共有できる仲間」として想像力をどんどん働かせ、持ち前の行動力で新しい試みを実現させてきた。

2人がフライドポテトを販売するチャンスは意外と早く訪れる。2013年2月。イベントが行われる会場へのシャトルバス発着場の片隅にテントを張って、業務用フライヤーでポテトを揚げた。「よくあるフライドポテトだと思って食べたお客さんの顔が、ひと口食べただけで変わるんです。『おいしい』って」。それが2人にとって、一番の「利益」だった。そして思ったのだ。この「おいしい」は、巡り巡って畑に還っていくものなのではないか、と。

だから、本業である農業からベースがぶれることはない。「農家だから」伝えられる価値がある。それを一番の核としている。フライドポテトに使うジャガイモはトヨシロという品種で、素材そのものの味がしっかりしているのが特徴だ。それをなたね油でカラリと揚げる。昔ながらの圧搾方法で搾られた佐藤農場のなたね油は風味もビタミンも豊富で、ジャガイモに更なるうま味を加えてくれる。

「僕らにしか作れないフライドポテト」と自信をもって言えるのには、原料以外にも理由がある。ジャガイモは収穫時期や保存状況によって味が変わる。秋の新ジャガなら、サクリとした食感と爽やかな甘みが。雪室で貯蔵しておいたものを春や夏に調理すれば、ホックリとした食感と濃厚な甘みに。雪室から常温に出しておく時間によっても、味や風味は微妙に変化する。

「ジャガイモは生きているんです」とは、坂東さん。農作物をデリケートないきものとして扱えるのは、農家だからこその強み。忙しい農場の仕事の合間を縫ってさまざまなイベントに出店しているが、いつでも「その日だけのトクベツな味」を提供しているのだ。

中まで熱を通した後で、さらに高温の油で揚げることにより表面をカリッと仕上げていく。生イモの状態からしっかり水分を飛ばして揚げるのには、時間も手間もかかる。「油の中で、箸でジャガイモを弾いたときの感覚で、引き上げるタイミングがだいたい分かるようになりましたね」と、2人はちょっと得意げな様子。新ジャガは10ミリ角、保存しておいたものは8ミリ角にカットするなど、細部へのこだわりも相当なものだ。ーつづくー(取材・文/家入明日美 撮影/菅原正嗣)

■佐藤農場×坂東農場-1
佐藤農場×坂東農場-2

 

話の主は…

佐藤農場×坂東農場

佐藤農場

音更町駒場東3-15

TEL.0155-44-2282

 

坂東農場

芽室町北芽室北6-30-2

TEL.090-4877-4115

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.49 Autumn 2016より

https://www.n-slow.com/books/books-5521

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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