2021 Jan
22

SORRY KOUBOU-5

製品に息づくハーブの力を、直接、手渡したいから。

山田さんと小松さんは下川町を訪れ、人に会い、話を聞く。惹き付けられたのは、ある会社の代表の生き方だった。同じ女性であるその社長は下川町に移住し、起業を果たした人。社長自ら森に入り、枝打ちをする姿に深い共感を覚える。「近くに目標となる人がいる」。起業するあたって抱いていた一抹の不安。でも、目の前に目標となる人がいることで、ふたりは大きな勇気をもらう。程なく、地域おこし協力隊として、下川町に移り住むふたりがいた。

あの時からすでに4年の歳月が流れ、2017年の春、ふたりは会社を設立した。「ソーリー工房」。社長は山田さん、製造責任者は小松さん。相変わらず、多くの仕事を分担しながら、ふたりですべてをこなす。ハーブ栽培に徹することで、化粧品などの原材料としてのハーブを大量に栽培し、大きな企業に卸す道も含め、仕事のやり方、将来の姿、下川町での暮らしなどについて、ふたりでとことん考え、話し合ってきた。本気でぶつかり合い、喧嘩もたくさんしてきた。今は、たくさんの雨が降って、乾くたびに関係性が深まり、未来に向けてのまだ見ぬ姿が少しずつ顔を出そうとしている時期なのかもしれない。

ハーブチンキの独特な販売方法。ソーリー工房を語る時に忘れてはならないことのひとつだ。まるで家族のための料理を作るかのようにして、ふたりの手によって生まれてくる製品は、いわば家庭料理のようにいつも「フレッシュ」なのだ。そんな製品をフレッシュな状態のまま広く流通させようとすると、あたりまえのことだが酸化や腐敗が進む。肌に直接使うものだから、酸化防止剤や防腐剤のような余計なものは使いたくない。そう考えて辿り着いたのが対面販売だった。カモミールチンキ、カレンデュラチンキなど、目の前のハーブチンキから必要としているもの、好きな香りのものなどを選んでもらい、自宅で少量ずつ、自らミックスして使ってもらうという方法。いわば、手づくりのハーブ化粧水だ。自然界のハーブの持つ力をフレッシュな状態で、ストレートに取り込んでもらいたいからとふたりが考え出した販売方法。「こそっと、ハット」での売り方をはじめ、ふたりがイベントなどに参加しては対面販売に力を注ぐ理由がここにある。

北海道下川町の厳しい自然、気候風土、荒れた土地でたくましく育つハーブたち。花や葉の香り、花の色素、根っこなどに含まれる神秘的な力をそのまま日々の暮らしに取り入れること。あくまで手づくりによって生まれてくるソーリー工房の製品。自然そのままの力を癒やしと共に受け取ることで手にできる世界の豊かさ。春から秋にかけて、ソーリー工房のふたりが長い時間を過ごすハーブ畑で、ほんの僅かな時間だったけれど、共に過ごせたことで体感できたこと。それらを多くの人たちと分かち合えたらと願う。おしまいー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)

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話の主は…

SORRY KOUBOU(ソーリー工房)

下川町一の橋268

TEL.01655-6-2822

http://sorrykoubou.jp

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.57 Autumn 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-10264

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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