2021 Jan
28

SORRY KOUBOU-4

製品に息づくハーブの力を、直接、手渡したいから。

仙台時代の山田さんはひどいアトピー性皮膚炎に悩んでいた。何を使ってみても良くならない。お金をかけても無駄。市販の化粧品などではどうにもならず、ついには自分で石けんや化粧水を作っては自らの肌で試し、結果が良ければ、同じ悩みを持つ友人たちに分けてあげたりしていたという。ハーブを手に入れては成分をアルコール抽出するなどして、余計なものが入っていない化粧水を作る。ひどいあせもに悩んでいたときなどは、これも自分でカモミールの入浴剤を作ることで、あせもの酷い症状を克服したこともある。

自分が悩みを抱えていただけに、山田さんはいつしか、同じようにアトピー性皮膚炎などに悩む友人たちの話に真剣に耳を傾けるようになっていた。その上で、友人たちの症状などが少しでも解消するようにと、手づくり化粧水や石けんなどを作るようになっていく。

「こうなった以上、(化粧品の)原料も自分で作ってみたい」。望むような原材料を手に入れるには、自らの手で必要なハーブ類を栽培するのが何よりの近道だとわかってはいる。でも、当時アパート暮らしをしていた山田さんにとって、ハーブ栽培のための畑を手に入れるのは至難の業。どうすべきか。自問自答を繰り返す山田さんがいた。そんな日々を送るうちに、次第に、仮にハーブを自分で栽培できるようになったとして、その先にある化粧品の製造許可を取得するにはどうすれば良いのだろうかと考えるようになっていく。手づくり化粧品などを作り続ける過程で、ビジネスとしての可能性を探るようになっていたのだった。

やりたいことの方向性が見え始めていた時期だっただけに、震災を機に関係性を取り戻し、何かと連絡を取り合うようになっていた小松さんとアトピーのこと、手づくり化粧品のことなどを話すようになるまでに、それほど時間はかからなかった。小松さんが大学時代、化学関係の科目を履修していたことが、化粧品の製造認可を受ける上で役に立つかもしれないこと。「一緒に何かやらない?」。ふたりの気持ちが一気に近づいていく。それからというもの、化粧品のこと、ビジネスのこと、将来のことなど、ふたりは多くのことについて話し込むようになっていく。もちろん、より深く知り合う上で大切な、ここまで生きてきたお互いのことなどについても、時間をかけて話し合ったことだろう。ふたりが30歳を迎えたばかりの頃のことだった。

薬草栽培をしていると知って、山田さんは長野県池田町を訪れる。カモミールを栽培し、入浴剤を作っている会社だった。どうすれば、自分で作れるようになるのだろう。多くのことを学び、調べていくうちに、薬草栽培が盛んなところとして北海道の存在が浮上してくる。さらに詳しく調べていく中で目に止まったのが下川町だった。

下川町が取り組んできたエネルギー政策に惹かれるふたりがいた。クリーンエネルギーに関しての目標が明確であること。あの大震災を経験しただけに、エネルギー政策に無頓着でいる訳にはいかなかったからだ。多くのことを考えるきっかけとなったあの大震災。これから先、自分たちの生きる場所を選ぶときに、エネルギーのことを抜きには何も考えられない。下川町にはクリーンな燃料がある。木もある。もしかすると、この場所でなら、やりたいことに打ち込めるかもしれない。―つづくー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)

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SORRY KOUBOU-52018111日公開予定)

話の主は…

SORRY KOUBOU(ソーリー工房)

下川町一の橋268

TEL.01655-6-2822

http://sorrykoubou.jp

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.57 Autumn 2017より

https://www.n-slow.com/books/books-10264

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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