2021 Mar
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暮らしを創造する愉しみ

花苗の販売についても、どこかから仕入れることはせず種を自家採取したり、株分けするなどしてイチから育てる。メインは大好きな宿根草。理由はいくつかあるが、一番は「季節を感じさせてくれるから」。手をかけさえすれば、さまざまな花の栽培が可能となった昨今。だからこそ、季節感を大切にしたいとナオさんは言う。「雪が解けて一番に咲くのがこれ、次はこれ、その次は…」。その年の気候によって時期は多少ずれるが、花の咲く順番は変わらないそうだ。仕入れれば、もっといろいろな種類の花を扱うこともできる。けれどそれでは、どこの苗屋で買い求めても「同じ」。それではチョット、面白くない。「自然と在来のものが多くなって地味な花ばかりって言われることもありますが、『こういうの』が好きな人には合ってるんじゃないかな」。「はっぱごこち」の名前で苗屋をスタートさせたのは、5年前。ナオさんのどこまでも伸びやかなスタイルに呼応するように、じわじわと客も増えてきた。

そんな具合に一つひとつ、夢を探しながら形にしてきたナオさん。話している間にも次々に飛び出す「暮らしの発想」が実に豊富で、ぐいぐいとその世界に引き込まれていく。

たとえば、「ハコ水田」。自分で米を栽培して食べられたら楽しそうだな…と思ってやってみたら、「できちゃったので、これは面白いぞと」。町内で自然農法に取り組む桧山農場、釘を使わないハコを開発した辻野建設など、地域企業の協力のもとに商品化が実現した。90センチ四方の小さな箱で米を育てて収穫し、いただく。田植えや収穫だけを体験するものとは違って最初から最後まで携われるから、感動もひとしおだ。

他にも、町内で無農薬野菜を販売するファーム主食道草とタッグを組んで野菜の加工品を作ってみたり、元板金加工の職人に依頼して、見た目も可愛らしく機能性も優れたブリキ製のガーデングッズを開発したり。

「地域にある資源」を結びつけ、新たな価値を添えて発信するというプロデューサーとしての才能にも、目を見張るものがある。「これを作りたいから材料を揃えるのではなくて、ここにあるものをどう工夫して商品化するか。それを考えるのが、すっごく楽しい! そうやって取り組んだことが何かの拍子に合わさって、『あ、これもできるじゃん』って発見もあったり」。

羊や野菜を育てる自分達の暮らし、苗の販売や雑貨類の商品化、カフェへの展開。そういった地域の付加価値を発信する取り組みへの思いをすべて包括するのが、「kokochi屋」の屋号だ。掲げるテーマは、「田舎の愉しみをクリエイト」。

理想の生き方、暮らし方は人それぞれ。けれど、どんな選択をするにせよ、そこには自らの創造力を働かせたいものである。自分達の中からあふれる創造こそが、暮らしを彩る最も重要な材料になるのだと、ナオさんが教えてくれたから。ーおしまいー(取材・文/家入明日実 撮影/菅原正嗣)

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話の主は…

kokochi屋

当別町金沢1692-2

TEL.090-8907-9297

営業時間/10001700

4月末~ 11月中旬頃までのオープン。

 カフェのランチは土・日曜のみ。

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.56 Summer 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-9898

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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