ソフィア ファーム コミュニティー-1
本別町西美里別(にしぴりべつ)に、ベン・キャンベルさんとこのみさん夫妻が営む農場、ソフィアファームがある。11月の末とは思えないほど寒さが身にしみる日。農場に到着するなり、「今、ちょうどベンたちがニワトリの羽をむしっているわ」と、このみさん。このみさんの視線の先には、ベンさんが仲間と共に黙々と作業している様子が遠目に窺えた。本当かなと、恐る恐る近づいてみると、ベンさんはニワトリを捌いている最中だった。大きな手で、ニワトリの体をむんずと掴み、羽をむしりむしり。あっという間に、ニワトリは丸裸になった。そのこなれた手つきに、野性的なたくましさを感じた。ニワトリは近日行われる祭事のディナー用だという。
ベンさんとこのみさんは、バイオダイナミック農法という有機農法を駆使しながらオーガニックの野菜やハーブを栽培し、穫れたての農作物を農場の会員へ定期的に届けている。畑作業の基本は「手」。2人が育てた野菜はとっても味がある。トマト、ジャガイモ、ニンジン、ナス、キュウリ、ケール…。その野菜が本来持つ甘み、苦み、香り、歯ごたえがちゃんとある。食後には、お腹の底からエネルギーが湧き上がってくるのを感じるのだ。
そんな魅力を持った野菜づくりに一生懸命な2人の生活は、とってもエコ。農場のコンセプトのひとつでもある、「なるべく地球に負荷をかけないこと」は、そのまま日々の暮らしのテーマと重なっている。電気や化石燃料の使用は必要最小限。6頭のジャージー牛を飼いながら、自給自足に近い生活を送っている。
「なんにもなくて申し訳ないんだけど」と、話を聞いている間に、このみさんが農場の石窯で焼いたパンと牛乳を出してくれた。しかもジャムとバターを添えて。パンの原料の小麦粉だけは他のバイオダイナミック農家や十勝のオーガニック農家仲間のものを使っているが、その他はすべて農場で収穫、生産されたもので、ジャムもバターもこのみさんの手作りだった。それぞれの素材の味わいが舌に深く残る、とびきり贅沢なおやつだった。―つづくー(「スロウ vol.42」2015年冬号掲載)
■ソフィア ファーム コミュニティー-1
■ソフィア ファーム コミュニティー-2
■ソフィア ファーム コミュニティー-3