2021 Mar
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弥生の里農園-5

元気な子どもを育む食べものを

ここに至るまで、吉岡さんはいろんなことを実践し、身体に合わない食べものをひとつずつ抜いてきた。たとえば、朝の10分間、歩く。あるいは走る。人工甘味料を口にしなくなったら、あんなに苦しめられてきた頭痛から解放された。食品表示の欄が「カタカナ」でいっぱいの食べものを口にしなくなったら、身体が気持ちよく動くようになってきた。中でも、子どもと一緒に口にしないようにと約束した、あるうま味成分系の表示のある食品。それを身体に入れなくなってからというもの、子どもの頃のようなフレッシュな感覚が蘇ってくるのが実感できたという。「完全に抜かなくても、口にする量を減らすだけでも効果があると思う」。夢を追いかける。やる気を出す。ミネラル分を吸収する本来の力が身体に戻ってきて、脳にもいい影響があるのだという。「鬱病や認知症などにもいい」。吉岡さんは自らの経験も加味しながら、今ではそんな風に感じている。

二重盆地という特性をもつ名寄盆地で育つ作物はおいしい。吉岡さんの叔父が作るジャガイモのおいしさといったら。冷めたとき、特に違いが感じられるのだそうだ。「ポテトサラダなどにしても、冷めたときにさらにおいしい。冷めてもフレッシュなままで、なめらか。ミネラルバランスが良い上、カルシウム分が多いから、冷めても臭みが感じられないし、ボソボソ感もないの」。昼夜の寒暖差が大きい二重盆地ならではの味なのかもしれない。厳しい自然環境のこの土地で育つ作物は限られているらしいが、育つものに関しては、他の地域で育ったものに比べ、とてもおいしい。サツマイモ、ほうれん草などにしても、同じなのだそうだ。

今年も吉岡さんは「キクイモ」を育てている。ヒマワリみたいな小さな花を付け、丈は2メートルを超えるほどにも育つ。ゴボウに多く含まれているインシュリンやイヌリンなどが豊富で、いわばジャガイモとゴボウの中間の特性を持つ作物だという。戦時中、「ブタイモ」などと呼ばれていたのは、コンクリート脇でも育つほどのたくましさを持つが故の絶妙なネーミングらしい。糖尿病やガンなどにも良いとされているスーパーフードなのだそうだが、収穫できるのは10月下旬から11月にかけてのこと。ミネラルバランスの良い弥生の里の畑で育つはずのキクイモ。この秋で2度目になる収穫を吉岡さんは今から心待ちにしていることだろう。

「弥生の里農園」と書かれた小さな木の看板が掛けられていたのは、樹齢60年を超えるスモモの木の枝だった。作業用に使っている小屋の前で枝を伸ばし、木陰を作ってくれている。実りの季節がくれば、農作業の合間にスモモをもいでは口にし、喉の渇きを癒やす。今年からは裏の山から木を伐り出し、原木シイタケの栽培も始めている。春先には裏山から山菜を摘んで料理をしては、日々の食卓に乗せている。今年から3ヘクタールに増やしたという弥生の里の畑。夏を迎え、乾いた畑に蒔く水もまた、敷地を流れる沢からのものだ。

 

土が健康であれば、育つ作物も丈夫で健康。そこで日がな働いてきた吉岡さんが、こうして元気を取り戻せたこと。礼文島の自然の中で育った吉岡さんが、幼かったあの日のように、再び本来の健康な身体を取り戻せたこと。「礼文島の自然の中で育ったことを大切にしたい」。元気いっぱいだった島での日々は、今も大切な宝物。あの日々を取り戻したいから、子どもたちに滋味あふれる野菜を味わってほしいからと、吉岡さんは道北の地の土と向き合う。ーおしまいー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)

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話の主は…

弥生の里農園

名寄市弥生町

TEL.090-3893-1177

http://www.n-slow.com/producer/producer-8116

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.53 Autumn 2017より

https://www.n-slow.com/books/books-7923

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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