2021 Mar
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弥生の里農園-4

元気な子どもを育む食べものを

去年(2016年)の春から始めた農業だが、実はその3年ほど前から、吉岡さんは農業について学ぼうと、あちこちの地域の農家で実際に働いてきた。メロンやトマトなどの農家で経験したことは、今ではそのまま反面教師のようになって、現在の弥生の里での農業の在り方に反映されている。「トマトの香りは本来、癒やされるようなものなのに、農薬を1回かけただけで、まるでコンクリートみたいな臭いがするようになってしまう。そこで働くのが辛くなるような」経験もした。実際に、農作業をすることで、健康になるどころか、体調を崩すこともあったと話す。化学肥料や殺虫剤、除草剤などを一切使わず、「自然、古代農法」で作物を育てようという決意に揺るぎがないのは、こうした経験も手伝ってのことなのだろう。

「自然の状態で育った野菜には、野菜独自の有効成分が多い」。北見市で薬草を育てながらデータを取っている人から聞いた話として、吉岡さんが教えてくれたことのひとつ。野生の植物にはカルシウム、マグネシウム、カリウムなどがきちんと含まれていて、それらを口にしていれば、糖尿病をはじめとする多くの病気にかかることも少ないのだそうだ。化学肥料をたくさん使っている畑で採れる作物にはカルシウムが少なく、カリウムが多い。「野菜を食べているつもりでいても、実のところ、化学肥料の成分を食べているようなもの」。

今現在、土に足りない成分があったとしても、「土には自分の力で浄化する力が備わっているから」として、吉岡さんは化学肥料を畑の土に入れることはしない。必要最低限のものとして加えているのは、知人が作っているボカシ肥料や糠。それ以外には、畑の周りに生えている草を細かく切って糠などと共に発酵させ、独自の肥料を作っては、土にすき込んでいる。野生の植物の生育は天候の善し悪しに左右されにくいとされる。それを見習って、できるだけ野生に近い土の環境を整え、丈夫な作物を育てていこうとしているのだ。

吉岡さんが農業に従事しているのは、どこまでも子どもたちに元気になってほしいから。元気になった子どもたちに夢を追ってほしいし、夢を叶えてほしいから。「アレルギーやアトピー、鬱病などから子どもたちが解放されたら、子どもたちはもっともっとやりたいことができると思う」。継ぐ人がいない叔父の畑を1ヘクタールほど借りることで始めた野菜作り。昔だったら、太陽の下で1時間も作業をしたら、例外なく頭痛に襲われ寝込んでしまっていたというのに、今では1日中、外で畑仕事をしながら過ごしている。しかも、自分の畑で作ったものを食べているから、翌日もまた元気に働くことができる。ーつづくー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)

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話の主は…

弥生の里農園

名寄市弥生町

TEL.090-3893-1177

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きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.53 Autumn 2017より

https://www.n-slow.com/books/books-7923

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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