2021 Mar
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木のうつわ-3

一刀にすべてを込めて形づくる、木の器

船山さんは自身の作品について、こうも話してくれた。「使いやすい器だけが、器じゃない。器の形をしたオブジェだったり、オブジェみたいな器だったり。暮らしや食卓のアクセントとしての器があっていい」。分厚かったり、抱えるほどに大きかったり、やたら細長かったり、お椀のように見えて、実はすごく浅かったり。「使い方は、使う人の自由。インテリアや食器でもいいし、角砂糖を置いてもいいし、植物を飾ってもいい。実際に買ってくれた人の話を聞いて、『そんな使い方があったんだ』って、ビックリさせられることもあります。それがとっても楽しいんです」。

 

一方で、パンやお菓子を載せるのに程よいケーキ皿なども制作するようになった。こちらはこれまでのつながりの中から生まれてきたもの。リクエストを受けてという理由もあるが、母として、家族と共に食卓を囲む時間が増えたことにも起因しているようだ。

「造形的なものも、実用的なものも、どちらも大切。『私』から出てくる『カタチ』を、いろんな風に使ってもらえたら」。

「形づくるための、彫りの一刀」。船山さんから、そんな言葉が飛び出した。あらゆる形を、その一刀が決定づける。無駄な彫りなどひとつもない。装飾的な彫りではなくて、その一刀一刀によって形が生み出されていく。木という素材に備わっている情報、たとえば材質であり、木目であり、伐り出されたときの傷。それらを受け取りながら、どの方向に彫るのか、どのくらいの強さで彫るのか。「でもやっぱり予測できないこともあって…」。

「込めて込めて、作っています」。軽やかに話す船山さんの瞳の奥にあるのは、確かな歓び。もっともっと突き詰めていきたいという、作り手としての熱量。

子育て中ということもあって、ものづくりに使える時間の絶対量が減っていることは事実だ。けれどその分、「作りたいもののビジョンがはっきりしてきた」と船山さん。限られた時間の中では余計なコトは考えていられない。「以前は、うまくいかないと取り繕おうとしていたけれど、もはやそんなコトをしてる場合じゃない。作ろう!っていう気持ち。作ってると、何かが見えてくる」。 

船山さんの作品を手に取ってみる。彫り跡から伝わってくるのは、生き物のような迸るエネルギーと、力強い存在感。身近に置いておきたくなるような優しい温もり。船山奈月という、ひとりの作家としての軌跡が、そこにあった。ーおしまいー(取材・文/家入明日美 撮影/菅原正嗣)

木のうつわ-1
木のうつわ-2
■木のうつわ-3

話の主は…

木のうつわ

TEL.090-2074-5716

http://utsuwafunayama.blog.fc2.com

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.55 early summer 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-9266

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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