2021 Mar
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北尾久美子さんの バードカービング-2

尽きない憧れを、森の工房で木に吹き込む

プロのバードカーバー、そして北海道における先駆者として、ひたすら本物らしさを追求してきた北尾さんによれば、本来、硬質で平面的な木材に柔らかな羽の重なりや微妙な色合い、もっと言えば存在感、体温、生きて呼吸しているような温かみを再現するには「ひたすら鳥を観察すること」が肝心なのだという。言い換えれば、例えどれだけ繊細な木工技術と正確な彩色のセンスを以って作り上げたとしても、生命感や躍動感を表現できなければ宝の持ち腐れになる、といったところだろうか。確かに北尾さんの作品を見ていると、今にも囀り出しそうな開きかけの嘴や、調子を確かめるように片方だけをそっと伸ばした羽、獲物を射抜くような視線など、何らかの意図や心の機微が絶妙に表現されていると感じるものばかりだ。

なにしろ北尾さんと鳥の付き合いは長く、「初めて野鳥の存在が心に引っかかった」日から数えると、もう30年以上が経っているという。「ある日、実家の庭先に珍しい鳥が飛んできたんです。突然、ガガガガガって凄い音がして、あれは何だろうって空を見上げてもよくは見えない。図鑑で調べてもわからなくって、詳しい方に聞いて回って、やっとオオジシギだってわかったんです」。それからというもの北尾さんは、まるで彼女自身が求愛を受け入れてしまったかのように急速に、そしてどっぷりと野鳥の世界に魅せられていったのだと言う。野鳥の会にも所属し、野鳥探索会と聞けば何事にも優先させて足を運んだ「あとね、よくモズが来ててね。モズは気が強いですから、当時の飼っていた猫とずっと睨み合いの喧嘩をしてたんです。尻尾をグルグルさせて怒ってるのが面白くて」と、目尻を下げて話をする顔は本当に恋に落ちた少女のようにあどけない。ーつづくー(「スロウvol.20」2009年夏号掲載)

北尾久美子さんの バードカービング-1
■北尾久美子さんの バードカービング-2
北尾久美子さんの バードカービング-3

話の主は…

スタジオZERO

札幌市中央区宮の森216丁目 

TEL.011-615-6750

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.20 Summer 2009より

https://www.n-slow.com/books/books-205

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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