2019 Sep
21

石狩市民図書館-2

赤いタマゴは、大きな市民の夢

「石狩市民図書館とあゆむ会」の前身である「石狩市に図書館づくりをすすめる会」は、8名の女性でタートをきった。勉強会やアンケートでの意識調査をしながら実現させた初めての議会陳情結果は主旨採択。「主旨採択っていうのはいわゆる、あなたの思いはわかりましたよ、という採択のしかたです()。通常は建てるからこその採択なのだけど」(羽田さん)。「だから最初は、うわぁ、建つんだ~! って。無知だから喜んじゃってね(一同笑)。だから、え!? 毎回陳情出さなきゃダメなの!? とそういう世界でしたよ」(酉さん)。まさかその後17年余の歳月がかかるものとは…。その頃石狩には女性の議員が何人も立ち、議員への陳情も重ねるようになった。羽田さんは、同じ市民なのだからと、入会し共に勉強してくれた議員の一人。「議員の中にも少しずつ会員が増えていったということは、すごく力になりましたね」(及川さん)。こうして、会の発足から約10年後に、念願の図書館事業計画が決まり「開設準備室」が設けられることになる。満を持しての図書館建築は、市民からの自主的で自発的な企画に溢れた形で進んだ。それだけ専門性をと言うのなら準備期間もきっちりとろうね、ということになって。会のメンバーも図書館構想策定委員会の委員として、公的な発言をしました」(西さん)。会の活動が、図書館の建設時期そのものを早めることはできながったが、その長い足跡には「信頼関係」という花がちゃんと咲いていたのだ。行政と、そして市民との間に。

建物の入札は、公共施設の入札方法としては非常に珍しい「プロポーザル方式」が採用された。これは、建築士たちがそれぞれ自分たちのコンセプトと予算の見積もりをプレゼンしあって決めるもの。大きく膨らむ市民の夢の担い手として、「図書館の中にまちをつくろう」というコンセプトを打ち出した札幌の建築士、下村憲一さんが選ばれた。下村さんにとってもはじめての図書館建築だった。

「とにかく情報公開が大切だと言い続けました。 設計図の情報公開や建設現場の見学を求めたり。どうなのどうなの、聞かせて見せて、の精神で。みんなでへルメットをかぶって現場見学もしたし、設計図には無かった2階のトイレも情報公開があったからこそ実現したんです」(西さん)。「下村さんは驚いてました。こんな市民がいるのか〜、って(笑)。彼も図書館建築のことを死ぬほど勉強したって言ってました」(羽田さん)。市民の知的好奇心は、関係者に良い意味での刺激と緊張感をもたらす。こうして「彼女たちの自主性が、図書館行政を後押ししていった。 自分たちのまちに図書館をーーー。

見果てぬ夢を抱き続けてから約20年。当時30代だった彼女たちは5060代となり、今なお叶った夢に甘んじることなく、図書館の専門性向上のための活動を続けている。彼女たちにとっての「図書館」とは、そして活動の原動力とは一体なんだったのか。

「石狩市民図書館は、私にとっては夢の実現そのもの。暮らしに根ざした図書館は、知的欲求を満たしてくれるだけでなく、時代を越えて平和と自由と幸せのシンボルだと私は信じています。たぶん子供たちのためというのは後から付いてきた理由で、結局は自分のためにやっていたんだと思います」(西さん)。「私はとにかく図書館が好き、本が好きということが根底にありました。私にとって図書館というのは、子供の頃から絶えず出入りをしている場所だった。だからこれからもずっと、それこそ足腰立たなくなるまで関われると良いなと思います」(及川さん)。「私の中には、こういう形になった図書館の行く末を見ていきたいという思いがあって、この図書館がこれからどんなふうに展開していくのか、ということがすごく楽しみなんです。自分が言ってきた事、やって来た事がどんな風に未来につながっていくのか、なんかすごく愛おしく、嬉しく見守っていきたい! という気持ちです」(羽田さん)。

未来を見守る楽しみは、産みの苦しみを味わった人間に与えられた特権でもある。青空の上からでも見つけられるほどの大きな赤いタマゴは、市民としての想いを貫いた、彼女たちの夢の象徴でもあるのだ。ーおしまいー(「スロウvol.7」2006年春号掲載)

石狩市民図書館-1
■石狩市民図書館-2

話の主は…

石狩市民図書館

石狩市花川北71丁目26

TEL 0133-72-2000

https://www.ishikari-lib-unet.ocn.ne.jp/index.asp

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.7 early summer 2007より

https://www.n-slow.com/books/books-250

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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