2019 Sep
21

世界に一冊だけの本・展-1

本の形は無限大。今のあなたにしか、作れない本がある。

函館の観光名所、古い建物が街の風景の中に溶け込む元町エリア。目指すは函館市地域交流まちづくりセンター。丸井今井呉服店の函館支店として大正12年(1923年)に建てられた建物は、スケールの大きさといい、重厚感のある佇まいといい、とにかく極立つ存在感だ。建物は古くから地域の人たちに愛され、今は交流の拠点となっている。大理石でできた階段をコツコツと上り、「世界に一冊だけの本・展」(以下、本展)の会場へと向かう。

2013年で8回目を迎えた本展。毎年11月に行われ、会場には全国から「世界に一冊だけしかない」本が寄せられる。出展者数120名、総数209冊。地元函館を中心に北斗市や七飯町、今金町など、近隣市町村の割合が多いものの、札幌や釧路、稚内、東京や京都、兵庫から寄せられた本もある。そして出展者の年齢も、お母さんと一緒に参加した最年少の4歳、最高齢は何と88歳。出展者の年齢の幅がこんなに広い展覧会は珍しいことだろう。

「絵画や写真の展覧会となると、敷居が高いと感じてしまう。それじゃあ本にしたらどうかな、って思ったんです。本って、難しいものではなくって、綴じてあれば何でもありなんですよね。極端な話、自分の書いたものをホチキスで留めるだけでいいわけなので」。そう話してくれたのは、本展の発案者、中村ひでのりさん。中村さんは元々、東京で編集者としてキャリアを積み、編集プロダクションを経営していた。企業のプロモーションをはじめ、本の装丁などの仕事も手がけていたという。14年前に故郷北斗市へ戻り飲食店を営むようになるが、生まれ育ったこの地域で、何かクリエイティブなことをやりたいと思うようになっていく。

そうして行われた第1回目の本展。フタを開けてみると予想以上の反響があり、口コミで100冊以上の本が集まることになる。「自分の好きなことを本にしてみたかったんだっていう人たちが、けっこういたんですよ。意外とみんな真剣で、一生懸命作ってくれてびっくりしましたね」。

初めて行う展覧会で、それだけの本が集められたのには理由がある。それは出展者に対して規定をほとんど設けなかったこと。自分の手で作っていることが大前提としてはあるけれど、何らかの方法で綴じてさえあれば(人によって解釈は様々だが、それがまた面白い)、それは「本」として認められた。内容にも制限はなく、材料も自由。唯一、閉じた状態でA2以内に収めなければいけないという大きさの制限はあったにせよ、それ以上の決まりごとはほとんど設けなかった。

本展を開催するにあたって、中村さんはルールを3つだけ作っていた。ひとつ目が「参加料をとらないこと」。ふたつ目が「優劣をつけないこと」。みっつ目が「展示の方法は、あいうえお順に並べること」。中村さんが声をかけた知り合いの中には、イラストや文章のプロもいた。けれど中村さんは一切、特別扱いはしなかった。プロの人もいるし、そうでない人もいる。それらが一緒になって並んでいることが、本展の醍醐味のひとつでもある。本の価値は、手に取る人それぞれに違うのだ。ーつづくー(「スロウ vol.38」2014年冬号掲載)

■世界に一冊だけの本・展-1
世界に一冊だけの本・展-2

話の主は…

世界に一冊だけの本・展

*今年は、11月22~29日に函館市地域交流街づくりセンターにて、

11月30日~12月6日に函館コミュニティプラザ Gスクエアにて、開催予定。

https://handmadebook.wixsite.com/book/2018

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.38 winter 2014より

https://www.n-slow.com/books/books-151

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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