2019 Feb
23

大雪山・山守隊-1

人が来るほど美しくなる山へ

トレッキングをしているときなどに、「あーやっぱり自然はいいね」なんて呟いてしまうのだけれど、そもそも“自然”ってなんだろう。北海道の森林を形容するときによく「手付かずの…」という言葉を使うことがあるが、本当の意味で「手付かず」の原生林はほとんど残っていないとも聞く。だいたい、今歩いているこの登山道だって人の手によって、きちんと“道”として整備されているから快適に歩いていけるのだ。

山守隊の岡崎哲三さんに話を聞きに行こうと思ったのは、こんなことを考えたからだ。北海道を旅するうえで大自然を楽しむというのは欠かせないけれど、その“大自然”とやらを私たちが存分に堪能できるのは、人知れずそれを守り、生かしていく“人の手”があってのことではないだろうか。

岡崎さんは、合同会社北海道山岳整備の代表であり、一般社団法人大雪山・山守隊の代表でもある。そして、トマト農家でもある。ざっくりと言えば、普段は大雪山周辺の登山道の整備・保全をしている人だ。岡崎さんの定義によれば、「自然を利用するためには保護・保全が絶対条件。保全なき利用は『自然を使い捨て』することにつながる」。特に大雪山は、人々を魅了する美しい環境が残されてきた場所のひとつで、その生態系のバランスは非常に繊細だという。

6月初旬、岡崎さんの案内で、今シーズン初のパトロールに同行させてもらった。一緒に行くのは山守隊のスタッフである菅原圭祐さん、下條典子さん。上川管内の愛山渓温泉にある、愛山渓登山口からスタートする。温泉の建物のすぐ脇から始まる登山道は大雪山系の山々に繋がっている。大雪山の登山道の総延長は300キロにも及ぶというが、今日はそのほんの導入部分、1キロ足らずの部分まで行ってみる。

「今日は全然、荷物も少ないから…」と言いながら歩き始めた岡崎さんたちの背中には大きなリュックやチェンソー、ノコギリなどが背負われている。素人目にはこれでも充分大荷物のように感じられたが、それを素直に伝えると笑われてしまった。というのも、今日は撮影を兼ねての3名での“下見”だが、普段は多くの人が集まって、登山道の侵食を埋めたり、橋を架け直したりする。作業の際には長い丸太や大きな石、山積みの資材を背負って行くのだそうだ。ちなみに、華奢な女性の下條さんでさえ、丸太をヒョイと担いで山を登るという。

本州ではもう30度を超える気温を観測しているというのに、ここにはまだあちこちに雪が残っている。大雪山の登山シーズンは7~9月と短い。今回は本格的に登山客が増える時期を前に、雪解け後初めて通るこの道が、どのような状態かを確認しに行くのだ。ーつづくー(取材・文/片山静香 撮影/東藤亮佑)

■大雪山・山守隊-1
大雪山・山守隊-2
大雪山・山守隊-3

話の主は…

一般社団法人 大雪山・山守隊

当麻町伊香牛1区 

TEL.0166-56-9160

https://www.yamamoritai.com

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.56 Summer 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-9898

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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