2019 Feb
23

大雪山・山守隊-3

人が来るほど美しくなる山へ

山守隊は2018年に法人化し、職員を抱える企業としてのスタートを切った。「人を雇えないと本物じゃない」。登山道の整備は行政が管轄しているため、岡崎さんたちも発注がないと勝手に施工することはできない。「登山道整備」という特殊な分野への知見がある業者に作業が発注されるとは限らないのも現状だという。また、自然保護活動はボランティアの手に依る部分も多く、専門性や精度、システムに課題も多く残されている。

岡崎さんは、近自然工法を取り入れた登山道整備を、きちんと生計を立てられる「仕事」として確立していこうとしている。残念ながら今のところは、知識や経験、感性や想像力が必要とされる専門職であるにも関わらず、それを習得したからといってすぐに安定した生計を望める仕事ではないという。整備と同時に取り組んできた農家としてのトマトジュースの生産も、農作物の高付加価値化によって、少しでも通年の安定した収入を生み出せればとの考えからだ。どちらも自然相手の仕事であり、親和性は高い。しかし、「ボランティア精神だけで、立派な技術者は生まれない」とも。登山道の正確な情報を捉え、正しい技術を活かし、長期的な利用・保護計画を立て、資金を運用する。一連の流れを回していくには、やはりそれなりの組織体が必要になってくる。

幸い、近年登山道の利用者の意識は変わってきており、「山のために何かしたい」と行動してくれる人が増えているそうだ。山守隊が主催する整備イベントにも、50名を超す参加者が集まるようになった。「整備を楽しいと思ってくれる人が多く、うれしいですね」。整備する人とその他の登山者の間で「ごくろうさま、ありがとう」といった気持ち良いコミュニケーションが生まれ、それが次の参加者の増加にもつながっているという。「重い丸太をみんなで運んだりして苦しいんですが、でもみんなイキイキしてるんですよ。普段デスクワークの役場の人とかも(笑)」。

登山道整備は苦しいことではなく、楽しいこと。そして、国立公園であっても行政任せではなく、活用する自分たち一人ひとりが意識すべきこと。どんな人も、自分の立場で為せることがある。「観光資源がボロボロになっているのを放置して、それでも『観光で人を呼ぼう』、と言い続けるのはチョット違うと思うんです」。

自然の中に散々立ち入り、長年にわたりさまざまな恩恵を享受してきた以上、私たちはもう、「手付かずの」なんて無責任なことを言っている場合ではないのだろう。「正しく手を付けて」、人が訪れるごとに美しく再生される自然をつくり出していかなくてはならない。しかもそれは、意外にも「楽しさ」の中で実現することが可能なのかもしれない。生態系の再生のために具体的に行動を起こしている「人知れぬ守り人」の姿勢からは、多くの学ぶべきことがある。ーおしまいー(取材・文/片山静香 撮影/東藤亮佑)

大雪山・山守隊-1
大雪山・山守隊-2
■大雪山・山守隊-3

話の主は…

一般社団法人 大雪山・山守隊

当麻町伊香牛1区 

TEL.0166-56-9160

https://www.yamamoritai.com

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.56 Summer 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-9898

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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