2019 Jan
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金澤俊哉さんの挑戦-2

きこり屋はいくつの壁を越えられるか

故郷である北海道に戻った金澤さんは、自分の身体が体力仕事の林業に適応できるかどうかを判断するためにも、まずは現場に飛び込んだ。山の下草を刈り、苗木を植え、枝払いや間伐を行ない、木を伐りだすなどという仕事だ。

結局、和寒町で3年と蘭越町で1年、現場に身をおいてわかったことは、雇われの状態では自分の目指すところへ行けないだろうということ。技術や知識は得られたが、林業の業界にも根の深い問題が渦巻いていた。従来の型に納まったままでは、自身もその渦に身を任すしかなくなってしまう。

金澤さんが目にした現実とは、まずひとつに、農業と同じように林業も補助金なくしては成り立たなくなっているということ。

山を所有する山主が業者に依頼して、植林から伐採までを行うのが通常の流れになる。しかし、近年では伐りだした木材が安価でしか売れないため、それら全ての費用を負担すると山主は赤字。そこで、決められた樹種を植えるなど、国の政策に沿った山づくりを行えば、例えば植林時にかかるコストの9割を補助金でまかなうことができるのだ。「本当の意味で、山主のための山づくりになっていないんですよ。税金頼みの山づくりになってしまっていて、育林(木を育てるための作業)にまでお金がまわっていない状況なんです」。

それからもうひとつは、もったいない木があるということ。

一定の間隔で植林しても、その間から雑草のように生えてくる木がある。それを間伐するのも林業の大切な仕事のひとつであるわけだが、その木々は製材所にいかずに山にそのまま放置されてしまうことが多いのだそうだ。つまり山主にすれば、お金を払って雑草をとってもらうことになる。「だから、僕が目指すのはこれまで捨てられていた木に価値をつけること。そうすれば山主にいくらかお金が落ちて、補助金に頼らず山だけで循環することに少しでも近づけるんじゃないかと」。

このような問題を乗り越えて自分の理想に合う林業をやるとなると、方法はひとつ。「独立しかないですよね。でも、初めから他の業者と同じことをやるには、山から木材を運び出したりするブルドーザーやユンボとか、大きな機械が必要になってくるんです」。

そこで金澤さんが1人で始めるのに選んだのが、薪屋だ。これならば、機械があまり必要ないため初期投資が少なくて済む。それに、今後薪ストーブ人口が増加し、薪の需要が増えるだろうと金澤さんは予測した。―つづくー(「スロウvol.20」2009年冬号掲載、写真/高原 淳)

金澤俊哉さんの挑戦-1
■金澤俊哉さんの挑戦-2
金澤俊哉さんの挑戦-3

話の主は…

きこり屋

黒松内町字西熱郛原野245-4

TEL.&FAX. 0136-72-3763 

http://kikoriya.web.fc2.com/

*薪に関する詳細はHPをご覧下さい。

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.18 winter 2009より

https://www.n-slow.com/books/books-220

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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