共立日和な休日-2
小さな町だからだろう。訪れている人たちの多くは、顔見知りのようだ。それぞれに、親しそうに挨拶を交わしては、今日という休日を楽しんでいる。奥に設けられたテーブル席、さらには元は木材会社の社長の自宅スペースだったという和室に設けられたテーブル席で寛ぐ人々。規模の小ささ故か、どこまでも和やかな雰囲気が漂う。長い歴史に耐えてきた建物が醸し出す独特の重厚感が、時間の感覚をさらに曖昧なものにする。イベントといういかにも今風の言葉さえ、この空間にあっては曖昧模糊としてひたすらにたよりなく、言葉の概念の枠を超え、はみ出そうとしているように感じられてならなかった。
共立日和な休日の1日目のメンバー構成は、和寒町のcoffee&vintage「nido」(1月末で実店舗は閉店)、士別市の雑貨とオーダーメイドカーテンの店「梨の花」、士別市のbakery&cafe「cótori」の3店舗。そこに、場所提供者でもあるフランス料理店「共立日和」が加わっている。
小さく開催することに意味がある。後日、nidoの中野利樹さん、奈緒子さん夫妻の話に耳を傾けながら思ったこと。イベントと聞けば、規模の大きさばかりに目が向きがちなところ、あえてそうではない世界を大切にしたい。そんな風に考える人たちがこの北海道にいることを知ることになる。
共に北見市出身。利樹さんとパートナーの奈緒子さんは、東京で会社員として働いていたが、「住むには田舎がいいな」とUターンを決める。空気のきれいなところ、人の少ないところ。それが改めて田舎がいいなと思えた理由。だからといって、都会暮らしが嫌だとか、都会の人が冷たいなどと思っていた訳ではない。いわば、前向きに田舎暮らしを選択しただけ。利樹さんがweb関連の仕事をしていたことも、いくつかの理由でUターンを後押ししてくれたことだろう。
2人が和寒町で暮らし始めてから、今年でそろそろ8年になろうとしている。半年がかりで古い建物を改装。カフェを始めたのは2013年秋。中野夫妻はその翌年の2月、士別市民文化センターで行われたイベントに参加する。「真冬のスロウカフェ」。参加したのは8店舗ほど。カフェをオープンしてすぐのことだったから、「少しでも(カフェの存在を)知ってもらえればいい」と、開催を決めた。主催は梨の花とnido。士別市のCUTIE BABYやcótoriの堂高充子さんも参加していた。このときに知り合った水戸さんや堂高さんとのつき合いは、この先もイベントを共催する仲間として続いていくことになる。―つづくー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)