2019 May
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家づくりは暮らしづくり-3

お施主さんと設計士さんのステキな関係

さて、大島さんが思い浮かべたアイディアを、かめ設計室が現実化してゆ作業が行なわれたわけですが、これがなかなか大変だったようです。最終案に辿り着くまでに、考え出した図案は100 近く。

なぜなら、繁樹さんと美奈子さんは、住まいに関してことさらに敏感な感性を持つ人たちなのです。プロの設計士に負けず劣らず、家づくりにかける二人の情熱が並大抵のものではないということと、そしてこのとめどない思案を心から愉しんでいるということは、その口ぶりや新しい家を眺める眼差しから見て取れるほどでした。そもそも、結婚の決め手も「この人とだったらいい家がつくれそうだと思った」からだとか。「図面を書いてFAXするでしょ。そうしたら、例えば、高さ550ミリを570ミリに訂正してくるんですよ。センチあげたんかい!みたいな(笑)。センチ単位で指定してくるからね〜(羽渕さん)」。

そんな二人だから、それまで住んでいた町営住宅もちゃっかり好きなようにカスタマイズしていました。リビングには台所とを仕切るように、高さ73センチ(この数字が重要らしい)のカウンターを設置。部屋を大きく仕切っていた襖は、「壊して捨てちゃった」とか。

でも、「この間取りは良くできてる。何より、この屋根がかっこいい」と、長年住み続けてきた繁樹さんだけでなく、美奈子さんもこの小さな住まいをベタ褒めです。「この町営住宅がかっこいいって言うんですよ。好きだっていう人はいても、かっこいいっていう人はなかなかいないでしょ(羽渕さん)」。

それから、新しい家づくりにおいて、大島さんが出した大きな条件は、「町営住宅」のほかにもうひとつ。それは、「ソファーの似合う家」でした。

繁樹さんが数年前に中古で購入したという角ばった紺色のソファーは、もはやそれなしではこの家を語れない存在。「オークションで買ったはいいけど、届いてみたらボロボロだったの。クレームも効かないし、どうしようって思ったんだけど、なんだか眺めてたらかっこよくなってきてね。結局、同じものが買えるくらいお金がかかっちゃったんだけど、家具屋さんにリフォーム出して、布を張り替えてもらって(繁樹さん)」。

「でもその時に、脚の傷は直さないでくれって注文したんだって。この傷がかっこいいんだから、この脚には一切触らずに直してくれって。そう言うところが面白いよね(山田さん)」。

傷だらけの脚を持つソファーを愛してやまない繁樹さんの思いをしっかりとキャッチしたかめ設計室は、ソファーの寸法から家のデザインを決めていきました。結果、このソファーをどこに置いても似合う家、と設計士が自負するほどのものができたのです。

ちなみに、そのソファーを置く場所は、土間続きに設けられた部屋。ラウンジと名づけられた、大人な雰囲気の空間です。これまた繁樹さんお気に入りのオーディオを正面にしてソファーに腰掛け、一杯飲みながら音楽を聴くという、心満たされるひとときを過ごすための場所。できるだけ小さな家を、といっても、そうした遊びの空間を外さないところにもまた、暮らし方のセンスが窺えます。

ちなみに、大島さんが気に入って使っている3脚の椅子も、新しい家の条件でした。布張りの座面と4本脚をもつシンプルな椅子です。この椅子も新しい家で使いたい、という要望に応え、新居の窓辺には椅子がぴったりはまるデスクを設置。そして、ソファーといい椅子といい、特に「座るもの」に敏感な二人が暮らす家の窓は、座った時の目線にちょうど良い位置で木の窓枠が外の景色を縁取ってくれるようになっています。ーつづくー(「スロウvol.15」2009年夏号掲載 写真/高原淳)

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話の主は…

かめ設計室

kamedesign.net

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.15 early summer 2008より

https://www.n-slow.com/books/books-225

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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