2019 Feb
23

蜜鶴本舗のハチミツ「蜜鶴」-2

釧路の冬を越えて届く、ティースプーン1杯の恵み

ミツバチの世界は、ある意味、とても合理的だ。1匹の女王蜂と数万匹の働き蜂で群れを構成し、驚くほどに高度な社会を作ることで知られている。女王蜂は3年ほどの一生のほとんどを巣の中で暮らし、毎日1000〜2000個もの卵を産み続ける。対して、1ヵ月〜3ヵ月ほどの寿命しか持っていない働き蜂は、巣の中の掃除をしたり幼虫の世話をしたり、花粉や花の蜜を集めて過ごす。

養蜂では、ひと抱えほどの大きさの木製の巣箱が使用される。中には数枚の板(巣枠)が設置され、ミツバチはこの板に六角形の小さな部屋を無数に連ねて巣を作る。ひとつの巣箱には、ひとつの群れが暮らすこととなる。

蜜鶴本舗では家畜として一般的なセイヨウミツバチを約50箱(50群)飼育している。花の季節に合わせて日本中を移動している養蜂家は何百箱とミツバチを飼っているというから、規模としてはまだまだ小さい。「目指せ100箱ですね。達成するのは至難の業でしょうが」と土橋さんは笑う。

釧路の夏と秋は短い。花がある時期はさらに限られるので、短期間でどれだけ多くの蜜を集められるかによってその年のハチミツの量は大きく左右される。ミツバチの数は多い程良い。たくさんの箱を持っているならば量をカバーすることができるが、小規模では難しい。ここで鍵になるのが、分封をいかに防ぐか、ということだ。

分封とは、ひとつだった群れがふたつに分かれること。春になるとミツバチたちは活発に活動を始め、女王蜂は産卵を開始する。巣箱の中のミツバチがどんどん増加していくと、女王蜂は新しい巣を探すために半数ほどの働き蜂を連れて手狭になった巣を出て行ってしまう。文字通り働き手が半減してしまうことになるので、経済的にも大きな痛手だ。

これを防ぐには、巣箱の中を定期的に検査(内検)して、新しい女王蜂の誕生を阻止する必要がある。新しい女王が生まれない限り分封しないという、ミツバチの生態を利用した方法だ。通常、ミツバチは六角形の部屋の中に卵を産みつけるが、女王蜂の卵を育てる部屋(王台という)は袋状になっており、分かりやすいそうだ。内検で王台を見つけたら、速やかに取り除く必要がある。

女王蜂が成虫になるまでに要する日数は約2週間とされ、養蜂の本にも内検は2週間が目安と記載されているそうだが、「それじゃあここでは遅いですね。自分の場合は10日に1回くらいやっています」と土橋さん。それでも間に合わず、「去年は一日に2回分封されたりして、大変でした」と苦労を語る。分封によって個体数が減少することによるデメリットは、もうひとつある。越冬に不利になるという点だ。

ミツバチは、冬になると巣の中で仲間どうし一ヵ所に集まり、蜂球と呼ばれる団子状態になって暖を取る。個体数が減ってしまうと、十分な温度を保つことができずに死んでしまう可能性が高くなるそうだ。

北海道の養蜂家の多くは、冬の間は巣箱ごと本州に移動して冬を越す。しかし、土橋さんは釧路で越冬させることに並々ならぬ力を注いできた。それはひとえに「『釧路で』養蜂をやりたい」という思いがあってのこと。「釧路で育ったミツバチが集めた、釧路のハチミツだって言いたかったんだよね」。そのために分封を防ぐ以外にも様々な工夫を重ねてきた。ーつづくー(取材・文/家入明日美)

蜜鶴本舗のハチミツ「蜜鶴」-1
■蜜鶴本舗のハチミツ「蜜鶴」-2
蜜鶴本舗のハチミツ「蜜鶴」-3

話の主は…

蜜鶴本舗

千倉工業株式会社 養蜂部

釧路市釧路町若葉3丁目28

TEL.0800-800-1832

http://www.mitsuru-honpo.co.jp

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.39 Autumn 2014より

https://www.n-slow.com/books/books-150

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

category