2019 Feb
23

lämpöのみつろうキャンドル

蜜蝋キャンドルが教えてくれたこと

この物語に登場するのは女性の仲間とミツバチ、それから、蜜蝋のキャンドル。「蜜蝋キャンドルが灯っていると幸せなんだよね」、「ね、フフフ」、「ウフフフフ」。まるで少女のように顔を見合わせて会話する彼女たちは絶妙なタイミングで、ここ、旭川で巡り会った。そう、巡り会ったのだ。

2016年8月に活動をスタートした蜜蝋キャンドル工房、lämpö。メンバーの森禄子さん、古川敬美さん、辻留美さん等は、然るべき時、然るべき場所に居合わせた。不思議な縁で、気がつくと一緒に蜜蝋キャンドルを作っていたのだという。

彼女たちを引き合わせようと運命の歯車が動き出したのは、数年前。当時札幌に住んでいた古川さんは、以前職場の同僚だった仲間と街でバッタリ再会。仲間が出演するゴスペルコンサートに誘われて足を運ぶと、後日、「来てくれたお礼に」と森さん手作りのソイワックスキャンドルをプレゼントされた。もともと自宅で、使いかけのキャンドルのリメイク品を作っていた古川さんは、森さんのキャンドルが最後まできれいに使い切れることに大感動。いつか作者に会ってみたいと、思いを募らせていた。森さんはというと、自宅でアロマサロンを営みながら、月1回のワークショップ「暮らしのレシピ」を主催。料理やアロマなど、さまざまなテーマで暮らしを見つめ直す機会を提供し、そこへ共感する人々が集まってきていた。その中には辻さんの姿も。

2016年に東川へ移住してきた古川さんも、「暮らしのレシピ」に通うようになる。同時に、「今度は東川の土地のものでキャンドルを作ってみたい」とアンテナを張る日々。持ち前の行動力で東川の養蜂家を訪ねたある日、気のいい主人が保存していた蜂の巣を分けてくれることに。一度作ってみようと仲間で集まったその日が、まだ名もないlämpöの結成の日。「まさかこんな風になるなんてね」と、今だに信じ切れない様子で振り返る。


全員、蜜蝋に関する知識はほぼゼロ。額を寄せ合って実験を繰り返す。手探りでハチの巣から蜜蝋を取り出し、型に流し込んでキャンドルらしくなったら、今度は燃焼実験。捨てられるはずのものを活用するのだから、できるだけゴミにならない、最後まで燃えるキャンドルに。妥協することなく時間をかけた分、きちんと使い切れるキャンドルに仕上がった。

キャンドル作りと並行して蜜蝋の勉強も続けていると、やがて浮かび上がってきたのは、ミツバチの現状。今、日本に限らず世界でミツバチの数が減っている。ミツバチがいなければ植物が受粉できず農作物も育たない。しかし皮肉なことに、ミツバチがここまで減ってしまったのは、私たち人間の営みがミツバチが生きていけない環境をつくってしまったからにほかならない。知れば知るほど人間の行動がちぐはぐで、循環という丸い円が描けていないことに違和感が増していく。「このキャンドルを通して、そんなミツバチのお話をもっとたくさんの人に伝えたいって思うようになったんです」。

自然に優しい商品や手作りする暮らしが人にもたらしてくれる幸せを知っているから、ミツバチの問題は深く胸に突き刺さった。ミツバチの存在、自然のサイクルに逆らわないことが、私たちやその次の世代が生きていく上でどれほど大切なことか。そんなメッセージを込めてキャンドルを作っていこうと決めたのだ。キャンドル工房の名前はlämpö。辻さんが見つけた「ぬくもり」という意味のフィンランド語を、他のメンバーもすっかり気に入り、その場で決まった。lämpöの蜜蝋キャンドルは、ミツバチからの頂き物。形も香りも100%自然界の成分で作られる。燃やしたときに有害物質が出ないため、空気を汚さず、かつ最後まで使い切れる、とってもエコなキャンドル。一方で蜜蝋は有限なもの。だから創作活動も、「自然のリズムに合わせてできるようにしていきたい」と話してくれた。


lämpöのキャンドルは、少しの濁りもなく、本当にきれいな黄色をしている。火を灯さずとも、蜂蜜の甘い香りがふわりと漂う。地球にも人にも優しい蜜蝋キャンドルを灯す、ほのかに甘いひと時。その時間をlämpöのメンバーは「幸せ」と呼ぶ。ーおしまいー

話の主は…

きょうの話は…

雑誌「チビスロウ大雪山2017」より

https://www.n-slow.com/books/books-6286

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

category