2021 Mar
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SORRY KOUBOU-3

製品に息づくハーブの力を、直接、手渡したいから。

オレンジ色の花を咲かせているカレンデュラの花を摘むふたり。「この色がキズにいいの」。ドイツではメディカルフラワーに分類され、ダメージを受けた肌に良いとされているというカレンデュラ。ハーブの話に耳を傾けながら畑をめぐるのが、こんなにも楽しく、心癒やされることだなんて。ただ漫然と花を摘むのでなく、目の前に咲いている花の状態を確かめながらの作業。「大量に生産して均一に同じものを作るというのでなく、色、花、香りなどを畑で確かめながら収穫し、ハーブのその時の状態に応じて最良のものを作っていきたい」。愉しみながらも真剣な眼差しに支えられた製品づくり。そんな緊張感さえも、ここでは心地良さと共にある。

自分たちの手でハーブを育て、化粧水などを作りたい。そんな思いと共に下川町に移り住んだふたりにとって、北海道の気候の厳しさは想像を絶するものだったようだ。「北海道の春は、本州の春とは別もの」。「春先には、植物のエネルギーが音を立てているよう」。「すごいエネルギーが自分の身体に入ってくるような」。下川町で暮らし始めたふたりにとって、マイナス20度の日が続く、長く厳しい冬を耐え忍び、春を迎えようとしている植物たちの発散するエネルギーの高さは、想像を超えるものだったようだ。一気にエネルギーを放出するかのように、「音を立てながら」地面を突き破って芽を出す植物たち。ふたりは遅い春を迎えるたび、この北国で育つ植物たちの秘めたエネルギーの存在を強く感じ取ってきた。北国の植物(ハーブ)に秘められたエネルギーを製品に取り込みたい、活かしたい。それがふたりの仕事の核にあるもの。

15年来の友だち」。山田さんと小松さんは同世代。というより、同年齢。学生時代に知り合い、大学を卒業してからはそれぞれに自分の道を歩み始めていた。ふたりを再び引き寄せたのは、あの東日本大震災に他ならない。宮城県仙台市で働いていたあの時期、昔の友人たちの安否確認をするなかで、ふたりは再会を果たしていた。

「明日、何が起こるかわからない」。あの時期、誰もが、そんな気持ちに囚われていたという。自分と向き合い、これまでの生き方を見つめ直す日々が始まっていた。エネルギーのこと。農業のこと。福島県で生まれ育った山田さんにとって、震災で突きつけられたものは傍らで想像する以上に深刻で、かつ大きかったことだろう。農業を営んでいた親戚の苦境を前に、「(汚染された)土を入れ替えることはできない」事実に向き合わざるを得なかった。絶望的なその時の思いを、山田さんは張り裂けそうになる胸にしっかりと刻みつけたことだろう。―つづくー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)

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SORRY KOUBOU-420181031日公開予定)
SORRY KOUBOU-52018111日公開予定)

話の主は…

SORRY KOUBOU(ソーリー工房)

下川町一の橋268

TEL.01655-6-2822

http://sorrykoubou.jp

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.57 Autumn 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-10264

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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