2021 Mar
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SORRY KOUBOU-2

製品に息づくハーブの力を、直接、手渡したいから。

ハーブ畑を耕しては種を蒔き、苗立てしては育て、収穫し、乾燥させては成分を抽出し、化粧水などとして製品化する仕事。もちろん、畑の周りののり面の草を刈ったり、畑の草むしりなどの雑用的な仕事も自らこなす。何から何まで、自分たちの手と身体を動かし、愉しみながらやること。それこそが、ふたりにとっての下川町での暮らしであり、仕事をすることなのだ。

「仕事と暮らし」。休みは休みとしてしっかり取れるような働き方より、ふたつの世界がキッカリ離れているような仕事の仕方よりも、「両方がグラデーションのように緩やかにつながっている働き方のほうがいい」。「仕事って、生きることそのものだと思うから」。そういう生き方に惹かれるふたりがいる。

7月も終わりに近づいたある日曜日。空を見上げれば、晴れ。あまりのうれしさに、天に向かって大声で叫び出したくなるようなスッキリとした晴天下、山田さんと小松さんに案内されて畑に向かう。ずっとずっと雨続きで、なかなか思うように育ってくれないとは聞いていたけれど、青空の下、こうしてハーブ畑を案内してもらえるのは、想像以上に心躍る体験だった。

秋に蒔いたカモミールの白い花はそろそろ終わりかけ。春に蒔いたものは、今が盛りのようで、小さな蜂が忙しそうに花から花へと飛び回っては蜜を集めている。「こんなにたくさんの蜂が飛んで来てくれるんだから、将来、ハーブのハチミツを作れるようになるかも」。「製品に使うハチミツも、自分たちでまかなえたらいいね」。事業展開の次の姿を思い描くのもハーブ畑の中。

ふたりはこれらの小さな花や茎を摘んだり、刈り取ったりしては、乾燥させていく。無数とも表現したくなるたくさんの小さな花を前に、「気の遠くなるような作業ね」と問いかけると、「そうね」と気の抜けそうになるほど淡泊な反応が明るく返ってくる。ふたりにとっての「花を摘む時間」の有りようが無理なく、ゆっくりと伝わってくる。花を摘むのは仕事であり、楽しみであり、暮らしでもある。つまりは生きることそのもの。

ふたりにとっての畑での作業は、きっと「とても愉しい仕事」なのだろう。肉体的にはきついこともあるはずだけれど、青い空に白い雲、時折、畑を吹き抜ける香しい風が、そんなことが何でもないことのように、ふんわり、軽々と山の向こうにまで吹き飛ばしてしまう。「ワッ、ホラあそこの雲、きれいね」。「ホント、気持ちいい」。花を摘みながら、背丈ほどにも育っているハーブの説明をしながら、ふたりの口をついて出るのは、気持ちの良い言葉ばかり。「マロウ(マーシュマロウ)の花が咲き始めてる」と畑の中の細い道を進んでいったかと思えば、時折、低くかがんで、目に付いた雑草をこともなげにササッとむしり取っては、また笑い合う。その様子の、何と、イキイキとして愉しそうなことか。―つづくー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原 淳)

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SORRY KOUBOU-420181031日公開予定)
SORRY KOUBOU-52018111日公開予定)

話の主は…

SORRY KOUBOU(ソーリー工房)

下川町一の橋268

TEL.01655-6-2822

http://sorrykoubou.jp

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.57 Autumn 2018より

https://www.n-slow.com/books/books-10264

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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