2019 Feb
23

ギャラリー陶オーナー 丹後恵さん-2

訪れる人を野の花でもてなす

6月。そう、北海道の6月といえば、無数の野の花が次々に花開かせるとき。朝の3時ともなると、道東の東の空は薄紫や薄ピンク色、そしてミルク色に染まり、やがて空全体が白々と明るくなってくる。恵さんはこの季節、朝の3時にはもう家にいない。身支度を済ませ、車に花摘み道具を積むと、恵さんだけが知っている花畑へと出かけていくのだ。

朝露の中で眠っている野の花。今日1日を精いっぱい生きようと、昼間に備えて身体を休ませているとき。「植物がまだ眠っているときに摘んだ花は長持ちするの」。恵さんが早朝に野原や林の中へと行くのはそんな理由から。昼間は子孫を残そうと、虫や風を呼ぼうと必死になっているから、昼間摘んだ野の花は長持ちしないのだと。

それに、少しずつ目覚めては朝露を震わせている朝方の野の花の美しさといったら…。瑞々しい生命力にあふれ、はち切れそうなエネルギーに満ちているとき。一片ひとひら、花びらを開いていく様子は、太陽が高くなるにつれて活発になる虫や風の動きを予感しながら、ひとしずくの疑いもなく未来へと向かう気品に満ちている。

野の花を摘む。たとえ、目の前に咲く花を手折おることなくその場に佇もうと、等しく感動を分けてもらえる行為。野の花がつぼみを持ち、花開かせ、やがて実を結び、冬を迎える。そんな営みを、日々を過ごし、暮らしを営んでいるすぐ側で目にできることの何という贅沢。「ねえ、海岸近くのムラサキツメクサって、みんなとっても美人でしょう?」恵さんはよくこんな言葉で、幸せのお裾分けをしてくれる。深くてツヤのある赤紫の花びら、海辺ならではのミネラル分をたっぷり吸って、健康そうに咲き誇るツメクサ。「ほんとうに美人だこと」。心からそう思えるとき。ーつづくー(取材・文/萬年とみ子 撮影/高原淳)

ギャラリー陶オーナー 丹後恵さん-1
■ギャラリー陶オーナー 丹後恵さん-2
ギャラリー陶オーナー 丹後恵さん-3

話の主は…

ギャラリー陶

北海道広尾郡大樹町萠和4856

TEL.01558‐63975

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.15 early summer 2008より

https://www.n-slow.com/books/books-225

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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