2018 Sep
20

あすみちゃん-2

ある満月と、あすみちゃんの畑

人の手を介さずに作られた食べ物があふれ、自分の知識の及ばないものが、添加物としていつのまにか身体の中に入っていく。そんな世界がある一方で、食を通じて熱心に世の中への働きかけを行う人たちも大勢いる。

会いたい人に会う旅の中で出会った多くの「食」に携わる人から大いに刺激を受けて、あすみちゃんは自然農という方法で、自分の畑を持つことを決めた。「農業のやり方もいろいろあって。旅の中でもいろんな人の話を聞いたり本を読んだりしたけど、中でも自然農が、食べ物も人も平和に生きることなんだと思えて」。人間だけでなく、土も、草も、虫も、鳥も、あらゆるものが平和であれること。資源やエネルギーの問題、争いや憎しみの連鎖を生まないやり方を、まずは自分の足元で実践することが、自分なりのそれらの問題に対する答えなのだと思っている。

あすみちゃんは、作物を種から育てることに熱心に取り組んでいる。買ってきた種が、もしかすると外国からやってきたものかもしれないから、できる限り種も自分で採ることにしている。「身近なものが、いちばん力強い」。無農薬・無肥料で、耕すこともしないから、畑には数え切れないほどの植物が生い茂っている。「人間の都合のいいように手を加えたものではなくって、元々のこの土地の土に根づくものを育てたい」。土に足りない栄養は、そこに生える植物が補ってくれる。そんなふうに、草たちが自分でバランスを取っていい土を作っていくのが、あすみちゃんが考える誰にとっても平和な農業なのだ。

でも実は、5年前に鷹栖に帰ってきてから3年間はなかなか畑と「仲良くなれない」期間が続いた。やりたいという思いとは裏腹、身体が全然思うように動いてくれないのだ。やっぱり、何十年もやっているおばあちゃんはスゴイ。そんなあたりまえのことにも気づいたりしながら、最近になってようやく少し慣れてきたのを実感できるようになった。「畑と、自分と、もっと一緒にいたい。豆屋、八百屋らしくいたい」。あんなに外に出たいと思っていたのに、今はもっと自分の畑で、生き物と自分と向き合う時間を大切にしたいと思うようになった。

畑からは鷹栖町の街が見渡せ、遠くには山々が連なっている。おばあちゃんが守ってきた畑を少しずつ譲り受けて、育てる作物も少しずつ増やしてきた。薬草や木の実もたくさん育っているから、満月の日は、あすみちゃんは自分の畑から20種類以上の草花を摘んできて、いろいろなものに加工する。満月は植物の薬効がもっとも高くなるといわれている日。朝のうちは葉の部分がパワーに満ちて、日が高くなってくると、花の部分にパワーが満ちてくるらしい。それぞれの状態の一番良い時間帯に摘みたいからと、時間をずらしながら作業をするから、満月の日はついつい忙しくなってしまう。―つづくー(取材・文/片山静香 撮影/菅原正嗣)

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■あすみちゃん-2
あすみちゃん-3
あすみちゃん-4

話の主は…

きょうの話は…

雑誌「northern style SLOW」vol.49 Autumn 2016より

https://www.n-slow.com/books/books-5521

※「northern style スロウ」は、2004年に創刊した北海道発の季刊誌です。
大自然の恩恵を受けながら、丁寧に心豊かに暮らしている人々を、これまでにたくさん取材してきました。
できるだけ多くの方々に伝えたくて、少しずつですがWeb Magazineで紹介していきたいと思います。
毎週月曜日に1話ずつ。ぜひお楽しみください。
http://www.n-slow.com/concept

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